公正証書遺言を作成したときの効力とは?

自分で作成する遺言を「自筆証書遺言」と言います。

これに対して公証役場で公証人によって作成される「公正証書遺言」と呼ばれる遺言もあります。

自筆証書遺言と比べて、少し手間のかかる公正証書遺言ですが、これを作成することにも利点があります。具体的にどのような効力があるのか、ここで詳しく見ていきましょう。

 

 

証拠力・信用性が高い

公正証書遺言は、公証役場にて公証人によって作成されます。法律のプロである公証人によって作成される遺言書であるため、自分だけで作成した自筆証書遺言と比較すると、証拠力が高く、信用性の高いものであると言えます。

 

公正証書とすることで証拠力・信用性の高い書面になるという点は、遺言書に限らず他の書面であっても言えることですが、遺言の場合は特にこれが重要となります。

 

自筆証書遺言の場合だと、この遺言書は本当に被相続人本人が作成したものなのかなどを理由に、相続紛争が起こる可能性があります。

 

公正証書遺言の場合だと、作成時には本人かどうかの確認が公証人によって行われることや、十分な判断能力があるかどうかなどについてもしっかりと確認されます。

 

そのため、先程のような理由での相続紛争は避けることができるのも、証拠力の高い公正証書遺言の特徴でもあります。

 

検認の必要がない

自筆証書遺言の場合は、改ざんのリスクを防止するために、家庭裁判所へ遺言書を持って行き、検認の手続きを行う必要があります。

 

しかし、公正証書遺言の場合は、公証役場にて作成された上で原本はそこで保管されているため改ざんのリスクがないことから、検認の手続きは一切必要ありません。

 

相続財産・相続権の指定が可能

これは、自筆証書遺言であっても同様に言えることですが、相続財産についての指定、さらに相続権についての指定が可能です。

それらについて特に指定がない場合は、法定相続分に従い遺産が分配されます。しかし、遺言書に記載し指定することで法定相続分よりも遺言書の内容が優先され、法定相続分を超えた相続または下回った相続が可能になります。

 

また、本来であれば相続人となる人物が相続権を失う「相続人の廃除」や、遺言によって子供を認知する「遺言認知」なども可能です。

 

さらに「遺産分割の禁止」も指定できます。

これは、一定期間遺産分割を禁止するようにすることで、相続開始後すぐだと争いが起こる可能性が高いことなどを理由に、一定期間を設けたい場合などで活用されます。

 

公証役場にて作成される公正証書遺言は、自筆証書遺言よりも手間や費用がかかるもの、上に挙げたような大きな効力が期待できるでしょう。

家族信託と遺言は併用できる?両方ある場合はどちらが優先されるのか

信託契約は、委託者が自らの財産を信託財産として指定し、その管理運用を信頼できる誰かに託すことを言います。この仕組みを利用して相続対策をすることも可能です。

ただ、遺言書を作成したケースだと信託契約と矛盾してしまうこともあります。この場合どうなるのか、以下で解説していきます。

 

家族信託と遺言は併用できる

家族信託と遺言の併用は禁じられていません。

常に契約内容と遺言書の内容が被るとも限りませんし、信託契約で定めていなかった分につき遺言書で指定したり、遺言書で触れていなかった部分につき後から信託契約を締結したりすることも可能です。

 

そのためこれらは「いずれか一方のみを選択して利用するもの」というわけではないのです。

むしろ上手く併用することでそれぞれの弱点をカバーした財産運用が実現させられます。

 

遺言よりも家族信託の優先度が高い

前述の通り遺言と家族信託は併用ができますが、それぞれで異なる内容を定めてしまうこともあるでしょう。

 

このとき、遺言書の内容ではなく家族信託で定めた内容が優先されると考えられています。

 

というのも、遺言に関する規律は民法という一般法に根拠が置かれており、他方で家族信託は信託法という特別法に根拠が置かれています。

特別法のほうが一般法より優先するのが原則ですので、遺言があっても通常は家族信託が優先されるということは理解しておきましょう。

 

次に具体的例を見てみましょう。

 

先に遺言書を作成していたケース

先に遺言書を作成し、その後遺言書を作成した本人が家族信託契約を締結したとしましょう。

 

当該契約内に遺言書に抵触する規定がある場合、抵触した部分に関しては「遺言を撤回した」という扱いを受けます。

 

原則通り、家族信託が遺言に優先するのです。ただし、抵触していない部分に関してまでなかったことにはなりません。

 

家族信託契約締結後に遺言書を作成したケース

上の例とは反対に、遺言書を後から作成した場合を考えてみましょう。

家族信託の存在を知りつつ作成したのであれば、遺言書に記載した内容でルールが上塗りされそうにも思えます。

しかし実際にはそうなりません。原則通り家族信託で取り決めた内容が優先されます。

 

そこで信託財産に関して取り扱いを変更したいのであれば、遺言書を使って家族信託の内容を変えようとするのではなく、契約内容の変更に向けて受託者と協議を行うようにすべきです。

 

受益者が委託者と一致しない場合には利害関係が動くことになりますので、相続開始後親族間でトラブルにならないよう、関係者を巻き込んでしっかりと話し合いを行うようにしましょう。

信託財産にできる財産とできない財産について

信託契約を結ぶとき、信託財産の指定をしなければなりません。しかしあらゆる財産が信託財産として扱えるわけではありません。

そこでここでは「何を信託財産にできるのか」「何を信託財産にできないのか」について解説していきます。

 

信託財産とは

信託財産」とは、信託により受託者に属することとなる、管理すべき一切の財産を指します。

例えば預金1,000万円の管理運用を誰かに任せる場合、この預金が信託財産ということになります。

 

信託財産にできる財産

基本的には、信託できる財産の種類に制限がありません。自由に本人(委託者)は信託することができます。

 

実務上も、以下に関しては信託ができず困るというケースは考えにくいです。

  • 現金
  • 預金
  • 非上場の株式
  • 特許権
  • 商標権
  • 農地以外の不動産

 

ただし信託財産にできる類のものでも、それぞれに注意点があります。

 

例えば賃貸物件を信託財産とする場合です。

このように収益を生む財産を信託するとき、当該物件のみならず、物件に係る権利金、敷金なども信託しておく必要があります。

また、これに付随して固定資産税の支払い義務なども生じます。その支払いができるよう現金もある程度信託しておくなどの配慮も必要になってきます。

 

信託財産にできない財産

実務上、農地、一部の投資信託、預金債権などは信託財産とできないケースがあります。

 

農地に関しては、一般的な土地と異なり所有権の移転に農地法上の許可が必要となるからです。原則として、信託を理由にこの許可は得られないとされており、信託の効力を及ぼさせることができません。

 

投資信託に関しては、信託の制度上というよりも、証券会社の対応可否に問題があります。分別管理に即した口座開設・口座名に対応していない場合にはこれを信託財産とすることが難しいです。

 

預金債権に関しては、通常金融機関との間で譲渡禁止特約が結ばれていることに由来します。そこで信託契約においては信託財産を「預金」と指定するのではなく、「金銭」と表記し、債権ではなく現金そのものに効果を及ばせるよう工夫しなければなりません。

 

その他、当然ながら生命や身体、そして名誉などの人格権は信託することができません。

さらに、マイナスの価値を持つ債務についても通常は信託財産に含まないと考えられています。

債務については勝手に債務者が変更されてしまうと債権者に不都合が生じるからです。仮に受託者に資力がなければ、債権回収が十分に果たせないリスクを負うことになってしまいます。逆言うと、債権者の合意を得ることができれば、信託財産として債務も移転させることは可能です。

 

このように、信託財産とできるかどうかについては、信託の仕組みのみに着目するのではなく、広い視点を持って判断することが重要と言えるでしょう。

家族信託は遺言や遺贈などと比べてどのようなメリットがあるのか

あまり一般に馴染みがあるとは言えませんが、「家族信託」という制度があります。この制度を上手く利用すれば、遺言などではカバーしきれない状況にも対応できることがあります。

常に家族信託が優れているということではありませんが、そのメリットを知っておけば選択肢の1つとして検討することができますので、以下で紹介していきます。

 

家族信託制度のメリット

家族信託には、以下のようなメリットがあります。

 

  1. 遺言や成年後見制度では対応できないニーズにも応えられる
  2. 民法で規律されている遺言制度だと「後継ぎ遺贈」ができないが、家族信託の仕組みを使えばこれができる
  3. 遺言で被相続人が財産の行方を指定しても、遺産分割協議で相続人全員の合意があると異なる内容で相続が可能となるが、家族信託なら本人の意思に従った結果にさせられる
  4. 成年後見制度だと、本人の財産を他人のために利用することはできない。本人のために利用することが想定されている。これに対し家族信託なら本人のみならず家族のために利用するよう目的を定めればその通りに財産運用ができる
  5. 成年後見制度では財産の「保存・管理」に留まるが、家族信託ならより柔軟に財産の「運用・利活用」ができ、管理者のできることの幅が広がる
  6. 委託者が亡くなってから、あるいは意思能力を欠いてからも、長期的に本人の希望通りの運用をしてもらえる
  7. 財産を委託者および受託者の財産から隔離することができ、破産等の事情があっても信託財産を保護することができる

 

他にも様々な利点があります。

例えば相続対策としても非常に有効です。特に資産に不動産が含まれているときにはその共有の方法などを巡ってトラブルが生じることもありますが、あらかじめその管理運用方法を定めておくことで紛争と避けることができます。

 

他方、家族信託は仕組みが複雑であるなどの難点もあります。そこで信託に強みや実績を持つ専門家に相談することが、これらメリットを最大限活かすためのポイントとも言えます。

 

後継ぎ遺贈の問題はどう解決されるのか

二次相続まで考慮した遺贈が後継ぎ遺贈とも言えます。

例えば、被相続人のAさんが遺言で指定できるのは本人に係る相続のみです。Aさんの子であるBさんに財産を渡す旨指定することはできても、「Bさんが亡くなったときはCさんに遺贈する」旨の指定は有効となりません。

仮にBさんを被相続人とする相続において相続人が存在しないのであれば、元Aさんの財産は国庫に帰属することとなります。

 

他方、家族信託であれば将来的に起こる相続を視野に入れた財産運用も可能なのです。

家族信託はどんな目的で利用される?よくある事例を挙げて解説

家族信託は複雑な契約類型であり、様々な目的を果たすために活用することができます。この記事で家族信託がよく利用される例、主な用途などを解説します。

家族信託の主な目的

家族信託は成年後見制度を補完することができるとともに、相続や遺言に代わる制度としても活用できます。

その性質上、以下の目的で利用されることがよくあります。

高齢となった本人およびその家族の生活を守る

本人の判断能力が著しく低下したようなケースだと、成年後見制度が利用できます。同制度では家庭裁判所の関与を受け、所定の手続を経て財産管理等を任せる後見人の選任を行います。厳格な制度であるため安心できる反面、利用のハードルが高いという難点があります。

 

他方、家族信託では当事者間の契約でかまいませんし、比較的自由な内容で財産運用の指定をすることができます。

そこで、成年後見制度だとカバーしきれない、成年後見制度を利用できない、という状況下で本人とその家族の生活を守るために利用されることがあります。

本人が亡くなった後の財産承継

財産の承継は、本人の意思表示が残っていなくても相続という形で発生します。遺言書を作成しておくことでその備えとすることも可能です。

一般的に知られているのはここまでですが、家族信託も財産承継の手法として利用することができます。

 

しかも相続や遺言では対処しきれない状況にも、家族信託であれば対処しきれることがあります。例えば遺言書で「どの財産を誰に渡すのか」を指定すれば、基本的にその通りに遺産分割が行われるのですが、相続人全員の同意があればそれと異なる内容で分割することもできてしまいます。

他方、家族信託によれば本人の意思を反故にされることはありません。その意味で「破られない遺言」と表現されることもあります。

特定の相続人に財産が渡るのを防ぐ

誰かに財産を渡したい、財産運用の利益を与えたい、という場合のみならず「○○に財産が渡るのを防ぎたい」というケースでも利用されます。

 

例えば相続が開始されると、配偶者は常に相続人としての立場を得るため、通常は相続財産を受け継ぐことになります。しかし夫婦仲が悪く、「この財産は夫(または妻)に渡したくない」ということもあるでしょう。こうしたときでも家族信託を利用していれば本人の指定に従い特定財産の行方を指定することができます。

事業承継

委託者本人が事業を経営している場合、いずれは後継者への引継ぎが発生します。個人事業主の場合、事業用の財産も遺産分割の対象となり、財産管理が複雑になってしまいます。そのため事前に家族信託という形をとって自身の子などに事業を承継することがあるのです。

法人の経営者である場合、特に株式会社であれば株式の譲渡などを行うことになるでしょう。家族信託であれば様々な状況に柔軟に対応ができるため、事業を営んでいる方にも利用の機会があります。

家族信託の利用は専門家に相談を

様々な目的で家族信託が利用されていることを説明しましたが、適切に運用するには専門家のサポートが欠かせません。そのため弁護士や司法書士、行政書士など、信頼できる専門家を探すことから始めると良いでしょう。

信託契約の仕組みを解説!他の契約と比べた特徴も紹介します

信託契約を理解する上では、具体例を用いて状況をイメージすることが大切です。以下で信託契約について少しでも掴めるよう、仕組みを解説するとともに他の類似する契約と比較した特徴も挙げていきます。

信託契約の仕組み

信託契約は、財産管理を依頼する「委託者」、財産管理を任される「受託者」、当該財産の管理により利益を受ける「受益者」から構成されます。

 

例えば、高齢になり将来的に自身の判断能力が低下することを危惧しているAさんがいるとしましょう。

Aさんは金融資産や不動産などを所有しており、この管理を自分で続けていくことに不安があるため、親族のBさんにその仕事を依頼します。このとき、単に財産をBさんに譲渡するのであれば贈与などの契約類型となるところ、Aさんはただあげることを望んでいるわけではありません。

「Aさん自身のために財産を使って欲しい」「自分が亡くなった後も配偶者のCさん」のために財産を使って欲しい」という目的を持っているのです。

そうすると委託者はAさん、受託者はBさん、そして受益者はAさんまたはAさんとBさん、という構図になります。

 

これが信託契約の基本的な仕組みと言えます。

信託契約の特徴

財産管理の事務を任せるという点においては「委任契約」とも似ています。

しかし信託契約は、以下の点で委任契約と異なる性質を持っています。

 

  • 名義が移転すること
  • 当事者が亡くなっても終了しない
  • 預けた財産が強制執行の対象にならない
  • 受益者を保護する規定が法律上存在する

 

特に重要なポイントをいくつか詳しく説明していきます。

財産の名義が移転する

信託だと財産の名義が受託者に移ります。委託者は所有権を失うことになりますので、所有権に基づく法律上の権限はなくなってしまいます。

とはいえ「受託者は完全に独断でどのように財産を扱ってもよい」とはなりません。信託契約を交わす際に決めたルールに則って運用していかなければなりません。

 

となると、純粋に所有権を得たときとは異なりますので信託財産は「誰のものでもない財産」と表現することも可能です。

強制執行等の対象から外れる

委託者本人に強制執行を受けるべき事情があったとしても、信託財産に関しては所有権を失っていますので、原則として強制執行の対象から外れます。

借金などの支払い義務があり、その債権回収のために強制執行を受けたとしても、信託財産が換価されるリスクを避けることができるのです。

 

しかも受託者の純粋な財産でもないことから、受託者の財産からも切り離されており、その意味でも強い保護を受けられます。

信託契約とは?契約の内容や信託行為の種類について紹介します

複雑な内容であるため一般にあまり知られていませんが、財産管理や相続対策などで有効な契約に「信託契約」というものがあります。

ここでは簡単に信託契約とは何か、ということに触れ、その種類についても挙げていきます。

信託契約とは

そもそも「信託」とは「信用を託す」ことを意味します。

そのため信託契約は、本来自分が管理を行う自らの財産等につき、別の誰かに管理や処分を任せる内容となっています。

 

単に代理で各種手続きをしてもらうということではなく、自分名義となっている財産の名義変更なども行うのです。その意味で、他の契約に比べて「信用」が基礎にあると言えるでしょう。

 

信託契約に関しては信託法という法律で規律されています。

同法によると、基本的には「委託者」と「受託者」、そして「受益者」の3者が主な登場人物として予定されています。

  • 委託者:財産を預ける依頼主
  • 受託者:依頼主に信用されて、財産を預けられた者
  • 受益者:財産管理による利益を受ける者

一般的な契約だと2者が登場人物となるケースが多いところ、信託契約では当事者が比較的多いことからも仕組みが複雑化していると考えられます。

信託行為には3つある

信託行為には以下3つの行為があります。

信託契約

家族信託など、一般に信託と呼ばれるものの多くは「契約」により信託が行われます。

契約締結により成立させる信託行為を「信託契約」と呼びます。

なお、契約が必要といってもそれほど難しいものではありません。

契約自体、口頭でも成立させられますし、原則として書面であることは必要とされていません。リスクをなくすという意味で契約書の作成は重要ですが、これがなくても信託契約は可能です。

遺言信託

遺言を利用して信託を行うことも可能です。一般に言われる、遺言書による相続のことです。そのためわざわざ「遺言信託」と呼ばず、単に「遺言」と呼称されることが多いです。

 

契約によらない信託行為であるということは、「委託者が単独でする行為」という点で特徴的と言えます。

自己信託

信託では3者が登場すると言いましたが、委託者と受益者をいずれも自分に設定する行為は、「自己信託」と呼ばれます。

 

管理を任せた財産を、自分(委託者)の生活のために使って欲しいというときに自己信託という形式をとります。「今後認知症により判断能力がなくなってしまうかもしれないから、そのときに備えて管理する人を別に設けたい」という場合などに利用されます。

相続税の計算方法

前の記事では、相続税の課税対象になる財産とならない財産について見ていきました。

今回は、相続税の計算方法についてご紹介できればと考えています。

 

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相続財産があっても必ず相続税がかかるわけではない

亡くなった人が保有していた財産を相続した場合、その相続人には相続税がかかります。

 

ただ、相続税の課税対象となる財産の計算を行うと、相続した財産があっても相続税が発生しない場合があります
そこで、相続税の課税方法を簡単に解説していきます。

 

相続財産の相続税評価額を求める

課税対象となる財産については、その相続税評価額を計算しなければなりません

 

現金や預貯金は、亡くなった日の残高がそのまま相続税評価額になります。

一方、土地や建物、株式などはそれぞれの評価方法が定められています。

 

その評価方法にもとづいた相続税評価額を計算し、その合計額を求めましょう。

 

債務の額と葬式費用の額を求める

亡くなった人が借金を残したまま亡くなった場合、その借金は相続財産から控除することができます
死亡した時点での債務の額を計算し、相続財産の額から控除します。

 

また、葬儀・告別式の費用や寺院・火葬のために支払った費用は、葬式費用として相続財産から控除することができます

葬式費用の額を計算し、相続財産の額からいくら控除できるのかを求めておきます。

 

基礎控除の額を計算する

基礎控除とは、相続財産の額から差し引くことが認められる金額のことです。
基礎控除の額は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で求めることができます。

 

例えば、法定相続人の数が3人の場合、基礎控除の額は4,800万円となるので、この金額を相続財産の額から控除します。

 

相続財産から、債務の額や葬式費用、そして基礎控除の額を差し引きます。
相続財産の額が基礎控除額以下に収まった場合は、相続税の課税対象となる金額がないことを意味します。

 

つまり、課税対象額が基礎控除内に収まれば、申告も納税も一切必要ないのです。

 

相続税額を計算する

基礎控除の額も差し引いて、課税対象となる金額を求めたら、その額から相続税の計算を行います。

いったん法定相続分に分割し、分割したそれぞれの財産の額に対する相続税を計算します。

 

その後、相続税の合計額を計算し、実際に相続した財産の割合で按分した相続税額を納付することとなります

 

【補足】相続税に利用できる控除・特例

相続財産の相続税評価額が基礎控除を上回ると、課税対象となる金額が発生し、相続税がかかります。

しかし、課税対象となる財産があるからといって、必ず相続税が発生するわけではありません

 

なぜなら、相続税の計算に利用できる控除や特例の制度があるためです。
どのような控除・特例があるのか、その内容を確認していきましょう。

 

小規模宅地の特例

小規模宅地等の特例は、被相続人が住んでいた自宅を相続する場合に、その敷地の相続税評価額を減額する特例です。

自宅の敷地の相続税評価額を、330㎡まで最大80%減額することができます。

 

これにより、自宅敷地の相続税評価額が数千万円も下がることがあり、相続税額にも大きな影響があります。

 

配偶者の税額軽減

相続人となった配偶者が法定相続分あるいは1億6,000万円までの財産を相続した場合、相続税が発生しない特例です。

 

未成年者の税額控除

相続人の中に未成年者がいる場合、成人になるまでの年数×10万円の相続税が控除される制度です。

 

障害者の税額控除

相続人の中に障害者がいる場合、85歳になるまでの年数×10万円または20万円の相続税が控除されます。

 

相次相続控除

相続開始前10年以内に被相続人が相続により財産を取得し相続税を支払っている場合、一定の相続税が控除されます。

 

亡くなった人が保有していた財産は、すべて誰かが相続しなければなりません。
そして、相続する際には相続税評価額を計算し、相続税の計算を行う必要があります。

 

ただし、一部の財産については非課税となることが定められており、相続税の計算に含めなくてもいいこととされています

 

相続税の計算の際には、相続税評価額の計算と非課税財産の確認を確実に行うようにしましょう。

 

相続税の課税対象になる財産・ならない財産

亡くなった人の財産を相続すると、相続した人には相続税がかかります。

 

相続税の負担は非常に大きなものとなるため、生前からその対策を行う方も大勢います。


ただ、実際にどのような財産に相続税が課され、あるいはどのような財産には相続税が課されないのかを詳しくは知らないと思います。

 

そこで、相続税の課税対象になる財産とならない財産について解説していきます。

 

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相続税の課税対象となる財産

まずは、相続税の課税対象となる財産について解説します。
あらゆる財産が課税対象となりますが、相続税独自の考え方があるため注意が必要です。

 

現金・預貯金

預貯金は、銀行や郵便局などの金融機関に預け入れているお金です。

普通預金や定期預金などの種類がありますが、その種類に関係なく、すべての預貯金の残高が相続財産となります。

 

相続財産として課税されるのを避けるため、預貯金の一部を引き出しておくという人がいます。

 

しかし、預貯金から引き出しても、それは現金に形を変えただけであり、相続税の課税対象となります

そのほか、いわゆるタンス預金と呼ばれる現金も相続財産として課税対象となるものです。

 

株式・投資信託・公社債

証券会社で購入した株式を保有していた場合、その株式は相続財産となります。

 

また、投資信託や公社債などの債権を保有していることも少なくありませんが、これらもすべて相続財産となります。

 

また、自身が中小企業の経営者である場合などは、経営する会社の株式を保有していると考えられます。

このような非上場株式も相続財産となるため、相続税評価額の計算を行い、相続税の計算に含めます。

 

不動産

被相続人が保有していた土地や建物などの不動産は相続財産となるため、相続税の課税対象となります。

 

また、他人の土地を借りて建物を建てた場合などは、保有している建物だけでなく、土地を借りる権利を借地権として評価します。

 

死亡保険金・死亡退職金

死亡保険金を保険会社から受け取ったとしても、その保険金は相続財産ではありません。
ただ、亡くなったことで受取人に金銭の授受が発生するため、相続財産とみなして相続税の課税対象となります

 

死亡して退職したことを理由に支払われる退職金も、死亡保険金と同じく、厳密にいえば相続財産ではありません。

 

ただ、死亡したために発生すること、相続人が受け取るものであることから、相続税の課税対象に含まれます。

 

貸付金・未収金

他人にお金を貸していてまだ返してもらっていない場合、その貸付金が相続財産となります。

また、社会保険料の還付金や配当金の未収分などの金額がある場合は、その未収となっている金額が相続財産となります。

 

自動車

亡くなった人が保有していた自動車がある場合は、その自動車が相続財産となります。

 

その他の財産

ゴルフ会員権、金地金、絵画や骨董品などの美術品も相続財産となります。

 

また、家具や家電などの家庭用財産を一式として相続財産の額に含めることが、実務上は多くなっています。

 

亡くなる前3年以内に行った贈与

亡くなる前3年以内に贈与された財産については、相続財産の額に含めることとされています。

また、その財産を贈与した際に発生した贈与税については、相続税の額から控除することとされています。

 

名義預金

例えば親が子供の名前で作った預金口座は、形式的には相続財産でなくても、実際は亡くなった人の財産とみなされます。

 

このような預金口座を名義預金といい、亡くなった人の相続財産として相続税の課税対象となります。

 

相続税の課税対象とならない財産

ほとんどの財産は相続財産となりますが、被相続人が保有していた財産の中でも、相続税の課税対象にならないものがあります。

非課税財産と呼ばれるものには、以下のようなものがあります。

 

墓地、仏壇、仏具、神棚など

相続財産となるはずの現金を使って、お墓や仏壇・仏具などを購入すれば、相続税の節税につながる可能性があります。

 

ただし、購入した仏壇や仏具に骨董的な価値や貴金属としての価値など、投資目的と考えられる場合は非課税になりません

 

死亡保険金のうち非課税枠内の金額

受け取った死亡保険金のうち、500万円×法定相続人の数で計算される金額は、相続税の課税対象にはなりません。

 

今回は、相続税の課税対象になる財産・ならない財産について見ていきました。

次回は相続税の計算方法をご紹介できればと思いますので、お楽しみに。

特殊な形状・状況の土地の相続税評価額と節税方法

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前回の記事では相続税の土地評価方法と計算方法について解説をしました。

 

今回は、特殊な形状・状況の土地の相続税評価額と、相続税の節税方法について見ていきたいと思います。

特殊な形状・状況の土地は補正が加わる

路線価方式で土地の相続税評価額を計算する場合、路線価と地積で評価額を求めることとなります。

 

しかし、同じ地積でもその土地の状況によって、利用価値が高い土地と低い土地があるのが実状です。

 

そこで、土地の形状や道路への面する状況に応じて、評価額に一定の補正を加えることとされています。
主な補正の種類をご紹介します。

 

不整形地補正

土地の形が長方形や正方形に近ければ、非常に使い勝手のいい土地といえます。

 

逆に、形がいびつだと実際には使えない部分が生じてしまい、実際の面積以下にしか利用することができません。

 

そのような、いびつな形の土地については、想定整形地に対するかげ地割合を計算し、それに応じて補正率を求めます

 

普通住宅地区にある土地の場合、補正率が最小で0.6となります。
つまり、元の評価額の6割程度にまで評価額が引き下げられる可能性があるということです。

 

不整形地補正率表(普通住宅地区の場合)

  500㎡未満 500㎡以上750㎡未満 750㎡以上
かげ地割合10%以上 0.98 0.99 0.99
15%以上 0.96 0.98 0.99
20%以上 0.94 0.97 0.98
25%以上 0.92 0.95 0.97
30%以上 0.9 0.93 0.96
35%以上 0.88 0.91 0.94
40%以上 0.85 0.88 0.92
55%以上 0.82 0.85 0.9
60%以上 0.79 0.82 0.87
65%以上 0.75 0.78 0.83

 

間口狭小補正

土地が道路と面する距離が間口距離となります。
この間口距離が極端に短い土地は使い勝手が悪く、利用方法にも制約を受けることとなります。

 

そこで、間口距離が短い土地については、補正率を乗じて、相続税評価額を減額することとされています。

 

たとえば、普通住宅地区で間口距離が5メートルの土地の場合、補正率は0.94とされています。

 

間口狭小補正率表(普通住宅地区の場合)

間口距離4m未満 0.9
4m以上6m未満 0.94
6m以上8m未満 0.97
8m以上 1.00(補正なし)

 

奥行長大補正

土地の奥行距離が間口距離に対して極端に長い土地は「ウナギの寝床」などと呼ばれます。

 

このような土地は、すべての土地を有効に利用しづらい状況にあると考えられます。

 

そこで、奥行距離を間口距離で除して大きな数値となる場合は、相続税評価額を減額することとされています。

 

たとえば、普通住宅地区で奥行距離÷間口距離が6以上である土地は、補正率が0.90となります。

 

奥行長大補正率表(普通住宅地区の場合)

奥行距離÷間口距離 2以上3未満 0.98
3以上4未満 0.96
4以上5未満 0.94
5以上6未満 0.92
6以上 0.9

参考元:国税庁

 

土地にかかる相続税の節税方法

土地を相続する場合、その相続税評価額は非常に大きな金額となるため、相続税の負担も大きくなります。

 

そこで、相続税の計算をする際にできる節税の方法を検討すべきです。
どのような節税方法があるのか、ご紹介していきます。

 

小規模宅地等の特例を利用する

小規模宅地等の特例は、土地の相続をする際に、最も多くの人が利用できる可能性のある節税方法です。

 

被相続人が住んでいた自宅の土地を相続する際、最大で330㎡までの土地について、その評価額を80%減額できるものです。

 

あくまでも土地の面積とその割合が定められているだけであり、金額についての上限はありません。

 

そのため、5億円の土地を相続して4億円の評価額が減少するということもあるのです。

 

適用にあたっては様々な要件があるため、誰が相続するのかも含めて、慎重に検討する必要があります。

 

地積規模の大きな宅地の評価を利用する

大きな土地を相続すると、その分相続税評価額も高額になり、相続税の額も大きくなります。

 

そこで忘れずに適用を受けたいのが、地積規模の大きな宅地の評価です。

 

三大都市圏では500㎡、それ以外の地域では1,000㎡を超える土地を相続する場合に適用を受ける可能性があります。

 

地積が大きくなるほど、その減額の効果も大きくなるため、まずは適用を受けられるか検討するようにしましょう。

 

不動産鑑定による鑑定を行う

形がいびつな土地や間口距離、奥行距離の影響で使いづらい土地の場合、補正率を使って減額することができます。

 

しかし、その土地が特殊な事情を抱えている場合には、補正率だけでは正しい評価を行っているとはいえません。

そこで、不動産鑑定士に評価を依頼するのも1つの方法です。

 

路線価方式や倍率方式では正しく評価できない場合、不動産鑑定を依頼し、特殊な事情を加味した評価額を計算してもらいましょう。

 

参考元:国税庁 

 

相続財産のうちに占める土地の割合は、高くなるケースが多いといえます。
一方で、土地の相続税評価額の計算は簡単ではないことから、相続が発生して初めてその金額を知るというケースも少なくありません。

 

相続税対策や節税なども考えて、土地の相続税評価額がどれくらいになるのかを事前に計算してみるのは非常に重要なことです。

また、相続税評価額を減額するような補正計算や特例の適用も忘れずに行いましょう。

 

相続税の土地評価方法5つと計算方法

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相続が発生した場合に、相続財産の額の大半を占めることもあるのが、土地です。
土地の評価額は大きいため、結果的に相続税の額が大きくなる原因ともなります。

 

しかし、相続財産に含まれている土地の評価額がわからないため、相続税がいくらになるかわからないという方も少なくありません。

 

今回と次回の2回に分けて、土地の相続税評価額の計算方法や相続税の負担を減らすための方法を解説していきます。

 

相続税の土地評価額は時価の7割から8割

相続税を計算する際に用いる土地の評価額は、相続税評価額と呼ばれます。
土地の相続税評価額は、一般的に時価の7割から8割といわれており、また土地の固定資産税評価額は、一般に時価の7割程度といわれます。

 

第三者間で行われた取引価格をもとにした時価と比較すると、相続税評価額は低く、固定資産税評価額はさらに低くなります。

 

相続税における土地の評価・計算方法

土地を相続した場合、どのような流れで相続税の計算を行うのでしょうか。
簡単にその流れをご紹介します。

 

①相続財産を確認し、その相続税評価額を求める

まずは、どのような財産を保有していたのかを確認します。
借入金や未払金などの債務も、相続財産となります。
土地や建物、有価証券などは相続税評価額を求める必要があるため、その計算を行います。

 

②法定相続人を確認し、基礎控除を求める

誰が法定相続人になるのかを確認します。
法定相続人が確定したら、その人数から基礎控除の額を求めます。

 

③課税対象の額を求めて法定相続分に分ける

①で求めた相続財産の額から②で求めた基礎控除の額を差し引いた額が、課税対象となる金額です。

この額を法定相続分で相続したものとして、各相続人の相続分を計算します。
なお、相続財産の額より基礎控除の額の方が大きい場合は、相続税が発生しないこととなります。

 

④相続税の額を計算する

各相続人の相続分として求めた金額から、相続税を求めます。
そしてそれらを合計した金額が、すべての相続人が納付する相続税の合計額となります。

 

⑤実際に相続した財産により相続税を按分する

相続税の合計額を、相続した財産の割合に応じて、各相続人に配分します。
ここで配分された税額が、実際に納付すべき金額となります。

 

相続税の土地評価方法5つ

土地の相続税評価額を求める際は、いくつかの評価方法があります。
評価対象となる土地の所在地ごとに評価方法が定められているので、まずはその評価方法を確認しなければなりません。

 

また、土地の利用状況によっては、更地として保有している場合とは区別して評価すべきケースもあります。


では、様々な土地の評価方法について解説していきます。

 

路線価方式による場合

路線価方式とは、国税庁が公表する路線価を使って、土地の相続税評価額を計算する方法のことです。
毎年路線価の金額は見直されるため、国税庁のホームページで確認する必要があります。

 

路線価方式による計算方法は、「路線価×土地の地積(㎡)」です。

 

たとえば路線価が180、地積が300㎡の場合、路線価は千円単位となるので、180千円×300㎡=5,400万円となります。

 

相続した土地に路線価が設定されている場合は、必ず路線価方式により計算しなければなりません。

 

まずは、路線価が設定されているかどうかを、国税庁のホームページで確認することから始めましょう。

 

倍率方式による場合

倍率方式は、市区町村で定めている固定資産税評価額をもとに、相続税評価額を計算する方法です。
固定資産税評価額は、各市区町村から送付される固定資産税課税明細書に記載されているため、誰でも簡単に知ることができます。

 

倍率方式による相続税評価額の計算方法は「固定資産税評価額×倍率」となります。

 

たとえば、固定資産税評価額が3,000万円、倍率が1.1倍の場合、3,000万円×1.1=3,300万円となります。

 

この倍率は、土地の所在する地域ごとに定められています。
具体的な倍率は、国税庁のホームページで確認する必要があります。

 

なお、倍率方式によるのは路線価が設定されていない土地となります。
路線価が設定されているかどうかを知るためには、結局、路線価を確認しなければなりません。

そのため、土地の相続税評価額を計算する際には国税庁のホームページは必要不可欠と言えます。

 

借地権を評価する場合

借地権とは、建物を所有する目的で他人の土地を借りる際に発生する権利です。
土地を借りている人は、その土地を利用することができますし、簡単に貸主から返還を求められない立場にあります。

 

そのため、単に土地を利用しているというだけでなく、一定の権利を有するものと考えられているのです。

 

借地権を有する場合、その借地権の相続税評価額は「土地の評価額×借地権割合」となります。

 

たとえば、土地の評価額が5,000万円、借地権割合が60%の場合、5,000万円×60%=3,000万円となります。

 

このうち、土地の評価額とは路線価方式または倍率方式により求められる金額のことです。

 

また、借地権割合は国税庁のホームページの路線価図・評価倍率表で確認することができます。

 

貸宅地を評価する場合

土地を他人に貸して、その上に借主が建物を建てている場合、借主には借地権が発生します。
この借地権は相続財産として評価の対象になりますが、土地そのものの財産価値がなくなるわけではありません。

 

借地権が付着した土地のことを底地といい、底地と呼ばれる土地のことを税法上は貸宅地と呼びます。
貸宅地の相続税評価額は「土地の評価額×(1-借地権割合)」で求めます。

 

たとえば、土地の評価額が4,500万円、借地権割合が70%の場合、4,500万円×(1-70%)=1,350万円となります。
借地権として借主の財産となった金額の残りが、土地の所有者の財産となるのです。

 

貸家建付地を評価する場合

土地の上に、アパートや貸家を建てて家賃収入を得ている場合、その土地の所有者であっても、自由に使うことはできません。
土地の所有者がその土地を自由に使うことができない分、その土地の評価額は減額されることとなります。

 

自身で建設したアパートや貸家が建てられている土地のことを、貸家建付地といいます。

 

この貸家建付地の相続税評価額は「土地の評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)」で計算します。
なお、借家権割合は一律30%と定められています。

 

また、賃貸割合は床面積で計算することとなり、建物すべてを賃貸している場合は1(100%)となります。

たとえば、土地の評価額が5,000万円、借地権割合60%、賃貸割合1の場合、5,000万円×(1-60%×30%×1)=4,100万円となります。

相続税を大きく左右する「配偶者控除」について解説!

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相続税は、引き継がれる財産の大きさに対応して課税額が決定されます。

しかし基礎控除が一律に適用されるため、実質、課税機会はそれほど多くありません。

 

その他にも様々な控除制度が設けられており、節税を考えている方はその種類の把握や適用を受けるための手続などを忘れないようにしなければいけません。特に重要な控除制度は「配偶者控除」です。

 

配偶者控除とは

配偶者控除は、その名の通り、被相続人の配偶者に対して適用される控除のことです。

 

他の控除に比べて適用機会が多いですし、何より、控除額が非常に大きいという特徴を持ちます。そのため、様々な場面において、配偶者への遺産分割の方法が節税効果を高めるために重要になってきます。

 

控除額の計算式

配偶者控除は、以下の計算式に従って算定します。

 控除額 = 相続税総額 ×(①1億6,000万円 又は ②法定相続分相当 / 課税価格の合計)

 

要は、1億6,000万円まで、あるいは配偶者の法定相続分相当までは納税しなくてもよくなるということです。

 

①②のいずれか多い方を計算式に当てはめることができますので、非常に大きな効果が得られます。

 

また、このことから分かることとして以下が挙げられます。

 

  • 2億円や3億円、それ以上の額を取得しても、法定相続分に従った配分であれば相続税の納付は不要
  • 法定相続分を超える割合で配偶者が取得したとしても、1億6,000万円までであれば相続税の納付は不要

 

なぜ、配偶者控除は高額なのか

他の控除制度だと、数十万円や数百万円程度のものが多いのですが、けた違いにこちらは控除できます。

 

その理由として、配偶者という特別な地位が関係しています。

 

なぜなら被相続人の配偶者であれば実質的にその財産の形成に寄与しており、完全に他人の財産とは言えないからです。

 

また、子へと財産が引き継がれるケースに比べて、2次相続が短いスパンで発生しやすいと言えることも関係しています。
なぜなら、被相続にから配偶者Aへ財産Xが渡って課税され、さらに翌年に2次相続が始まって財産XがAからその子Bへ渡ると、二重に課税されているのと近い状態になってしまいます。

 

これを防ぐという目的もあり、大きな控除額が設定されています。

※なお、相次いで発生する課税を調整するため「相次相続控除」という制度もある

 

なお、節税を狙うのであれば、配偶者控除をフルに活かすのが良いとは限りませんので注意しましょう。

 

1次相続において子Bにも基礎控除は適用されますので、全財産を配偶者Aに渡してしまうと、2次相続において配偶者控除が使えない子Bには大きな納税義務がかされるおそれがあります。