現金や不動産、動産など、財産をあげたときには贈与税が課されることがあります。そしてこの贈与税と相続税は、本来別物ではあるものの実は深い関係性を持っています。
実際、一方の課税を免れるために対策を取っても他方が課されてしまうというケースが多いです。また、場合によっては二重に課されてしまうおそれもあります。これを防ぐために重要な制度が「贈与税額控除」です。以下でその内容を見ていきましょう。
贈与税額控除は二重課税を防ぐための制度
相続税対策の一つに「贈与」があります。
生前に財産を渡しておくことで相続による財産の移転を少なくし、課税額を下げるというやり方です。しかしこの贈与をしたとしても相続税の計算に含まれるケースがあります。しかも、それが常に贈与税のことを考慮した計算になっているとは限らず、そのままだと二重に課税されてしまうことがあります。
例えば贈与税においては基礎控除額である年間110万円までは非課税ですが、110万円以下の贈与をしていたとしても相続直前に行われたのであれば全額が相続税の計算に含まれてしまいます。110万円を超えていた場合には、すでに贈与税を納めているにもかかわらず相続税の納税をしないといけなくなってしまいます。
しかし、過剰な負担がかかっている状態ですので、その分を「贈与税額控除」として是正するのです。
二度目の課税機会がやってきたときに活躍します。相続税の金額から、すでに支払った税額を一定のルール内で引くことができます。
申告は必要
贈与税額控除は二重課税を避けるために重要な制度ですが、自動的に適用されるわけではありません。そのため、納税者が自ら気をつけて、計算し、申告などの手続をとらなくてはなりません。
税の計算は非常に複雑ですし、様々なルールを知っておかなければ正確な値を算出できません。法改正がなされることも多いですし、昔に知った情報がすでに古くなってしまっていることもあります。
そのため実際に申告する場合には税理士等の専門家にサポートしてもらいつつ、進めることが大切です。
なお、こういった手続のことを更正の請求と呼びますが、相続税の申告期限から5年以内であれば有効ですので、急いでする必要はありません。もちろん、証明できる書類等がなくならないうちにできるだけ早く済ませておくべきですが、急いで自分で行うことなく、正確に、確実に行うようにしましょう。
贈与税額控除の2パターン
贈与税額控除が登場する場面としては主に2パターンが挙げられます。
1つは「生前贈与加算」が適用されることによる二重課税を避ける場面。もう1つは「相続時精算課税」が関係する場面です。
いずれも、一定額を超えた贈与分につき贈与税をすでに納めていることが条件です。相続時精算課税については期間の制限がないため、かなり昔の課税が問題になることもあります。そのため二重課税を避けるためにも、できるだけ資料は残しておくということが大事になるでしょう。