複雑な内容であるため一般にあまり知られていませんが、財産管理や相続対策などで有効な契約に「信託契約」というものがあります。
ここでは簡単に信託契約とは何か、ということに触れ、その種類についても挙げていきます。
信託契約とは
そもそも「信託」とは「信用を託す」ことを意味します。
そのため信託契約は、本来自分が管理を行う自らの財産等につき、別の誰かに管理や処分を任せる内容となっています。
単に代理で各種手続きをしてもらうということではなく、自分名義となっている財産の名義変更なども行うのです。その意味で、他の契約に比べて「信用」が基礎にあると言えるでしょう。
信託契約に関しては信託法という法律で規律されています。
同法によると、基本的には「委託者」と「受託者」、そして「受益者」の3者が主な登場人物として予定されています。
- 委託者:財産を預ける依頼主
- 受託者:依頼主に信用されて、財産を預けられた者
- 受益者:財産管理による利益を受ける者
一般的な契約だと2者が登場人物となるケースが多いところ、信託契約では当事者が比較的多いことからも仕組みが複雑化していると考えられます。
信託行為には3つある
信託行為には以下3つの行為があります。
信託契約
家族信託など、一般に信託と呼ばれるものの多くは「契約」により信託が行われます。
契約締結により成立させる信託行為を「信託契約」と呼びます。
なお、契約が必要といってもそれほど難しいものではありません。
契約自体、口頭でも成立させられますし、原則として書面であることは必要とされていません。リスクをなくすという意味で契約書の作成は重要ですが、これがなくても信託契約は可能です。
遺言信託
遺言を利用して信託を行うことも可能です。一般に言われる、遺言書による相続のことです。そのためわざわざ「遺言信託」と呼ばず、単に「遺言」と呼称されることが多いです。
契約によらない信託行為であるということは、「委託者が単独でする行為」という点で特徴的と言えます。
自己信託
信託では3者が登場すると言いましたが、委託者と受益者をいずれも自分に設定する行為は、「自己信託」と呼ばれます。
管理を任せた財産を、自分(委託者)の生活のために使って欲しいというときに自己信託という形式をとります。「今後認知症により判断能力がなくなってしまうかもしれないから、そのときに備えて管理する人を別に設けたい」という場合などに利用されます。