不動産の名義変更は、登記という形で実行されます。そこで売買などを経て不動産を取得したときも、相続で不動産を取得した場合も、登記を行うのが通常です。
しかしこれまで、相続によって取得したときの登記(「相続登記」と呼ばれる。)は推奨されてはいたものの、義務ではありませんでした。無理に登記を行わなくても良かったのですが、このルールが2024年からは変更されました。
今後不動産を相続する方は、ここで紹介する新ルールに留意しましょう。
相続登記についての現状と問題点
登記制度は、財産等にかかる権利義務関係を公に示すための制度です。
誰が所有権を持っているのか、どの物件に担保権が設定されているのか、などの情報を公表することで取引の円滑化が図られています。
数千万円ものやり取りが行われる不動産について「本当は誰が所有者なのかわからない」といった状況だと、怖くて購入することに気が引けてしまうでしょう。
そこで登記を行い、誰でも基本情報をチェックできるようにしているのです。
しかしながら、相続した不動産に関しては登記が行われないことも珍しくありません。
売買契約に基づくケースと異なり、相続による取得は自動的に効果が生じるものですので、当事者の意識が比較的低いことも関係しています。
その結果、所有者不明の物件が多数現れており、土地活用などの面に社会的な支障が生じているのです。
相続後3年以内に登記をしないといけなくなる
上記の問題を解決する目的で、相続登記の義務化がなされました。
法律が改正され、相続によって取得した土地等について3年以内の登記が必須となるのです。
3年という期間の起算点は「不動産を取得した事実を認識した日」です。そのため厳密には相続開始日と一致するわけではありません。
遺産分割で取得することが確定していなくても登記が必要
相続人が何人もいるときは、①遺言書による指定を受ける、あるいは②遺産分割協議を行う、のいずれかのパターンによって取得者が定まります。
登記情報には所有権を取得した方を掲載しますので遺産分割が確定してから登記を行えば良いのですが、もし相続からなかなか取得者が定まらないのなら先に登記を済ませておかないといけません。
義務を果たさないとお金を取られる
義務化されることに伴い、その義務を果たさない人に対するペナルティも定められました。
最大で10万円の金銭を徴収されるおそれがあります。これは「過料」と呼ばれる行政上のペナルティで、絶対に徴収されるということでもありませんが、そのリスクについては認識しておく必要があるでしょう。
※刑事上のペナルティではないため、前科は付かない。