家族信託は無効になることがある!注意すべきケースを紹介

家族信託は便利な契約であると近年紹介されることも増えましたが、よく考えて信託を始めなければいろいろなトラブルに巻き込まれますので、慎重に進めることが大事です。

手間や費用をかけて家族信託を始めたにもかかわらず、後々無効になってしまう危険性もありますので、そうした事態を避けるために大事なことをここで紹介していきます。

契約時点で重度の認知症になっているときは無効

認知症対策として家族信託は有効です。将来的に認知症などになってしまって判断能力が落ちても、信託を始めておけば、管理や運用作業は受託者が行います。そのため委託者自身の能力に問題が生じても影響は生じません。

ただし、信託契約を交わすためには判断能力が必要であるため、すでに問題を生じている段階から家族信託を始めることはできません。

認知症になっているかどうかだけで判別されるわけではありませんが、重度の認知症になっている、その他の理由であっても信託契約の効果について理解できない状況で信託契約を有効に締結することはできません。

遺留分の請求を防ぐことを目的に信託を始めても無効

家族信託によって、委託者の財産を信託財産とすれば、当該財産は委託者の手を離れて受託者が所有することになります。また、実質的な利益も受益者が受けることになり、委託者に関して相続が始まっても信託財産は遺産とはなりません。

遺言書を使って特定の人物に財産を譲渡することもできますが、この場合は「遺留分」の請求を受ける可能性があります。
※遺留分とは特定の相続人に留保される遺産の取り分のこと。

一方で、信託財産としておけばその請求を受けずに済むケースがあります。

しかしながら、遺留分の請求を回避することを目的とするのは不当であって、無効になってしまうことがあります。実際、過去の裁判では家族信託が無効になっています。

未成年者を受託者として定めると無効

家族信託において受託者は非常に重要な役割を担う存在です。

財産管理、契約関係の履行など、様々な法律行為を行うことになります。

そこで信託法でも、「受託者は、未成年者がなることはできない」と定められています。この規定に反することのないようにしましょう。

受託者が利益を受ける契約内容になっていると無効

家族信託を含む信託すべては、受益者のための契約です。受託者は求められた仕事をするのが役割であって、報酬を受けることはできても、信託による利益を受けるべき人物ではありません。

そこで、契約内容が、受益者のためではなく受託者のためになっているとき、無効になるおそれがあります。