遺言書作成の際に気をつけたい、注意すべきポイントとは?

以前からよく仕事で、自筆証書遺言のチェックを依頼されることがあります。

 

自分で書いていると気がつかないですが、遺言書を作成する上で、意外と行ってしまう間違いというのは多くあります。

 

今回は、このような自筆証書遺言作成時に、注意すべきポイントについてまとめます。

 

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遺言書を全てパソコンで作成してしまう

遺言書の財産目録については、パソコンで作成することが認められるようになりました。

 

ただ、遺言書本体は今でも自筆で書く必要があります。意外とこの点に関して誤解があるので、「遺言書そのものは自筆」ということはご注意ください。

 

遺言書のタイトル・日付・署名・捺印などを忘れる

遺言書を作成する際は、タイトルに「遺言書」など、遺言であることがわかる表記を入れておく必要があります。また、作成の日付・署名・捺印(認印で構わないが、実印だとより望ましい)などの抜け落ちにも注意する必要があります。

 

相続させる財産を具体的に書いていない

例えば、「自宅・田畑は跡を継ぐ長男に譲る」というような書き方はNGで、「長男 ○○○○ (昭和○○年○月○日生)に、下記の土地・建物を相続させる」など、どの財産を具体的に相続させるのか書く必要があります。

 

相続に関する書籍の文例集を見ながら、状況に応じた適切な文章を作成するよう、心がけてください。

 

自筆証書遺言書は、書き間違えたら最初から書き直す。修正液や訂正印はNG

自筆証書遺言では、表記を間違えた場合、間違えた部分に線を引き、法務省が提示する修正方法で訂正する必要があります。この中で、下に「上記三中、二字削除二字追加 法務五郎」のように、どの項目を何字削除、何字追加したかを追記し、最後に署名をする必要があります。

 

ただ、この修正方法の場合、下記の注釈忘れ、署名忘れなどを行いがちですので、最初から遺言書全体を書き直した方が安全と言えます。

 

読める字で書く

「そんなの当たり前だよ!」と思われがちですが、人によっては、達筆過ぎたり、個性的な文字を書かれたり、早く書くことを優先されるばかりに、普通の人には不明瞭な文字で書かれた自筆証書遺言があるケースもあります。

 

字の上手・下手と言うより、焦らず落ち着いて、読める字で書くよう注意してください。

 

財産目録・預貯金口座・不動産の登記事項証明書のコピーに自署の署名・捺印を入れ忘れる

財産目録はパソコンで、預貯金口座・不動産の登記事項証明書は写しがあれば、自署で記載する必要はありません。しかし、財産目録・各証明書のコピーには全て、遺言作成者の自筆署名と捺印が必要です。

 

遺言書本体にだけ署名・捺印を行えば良いと思いがちですが、付属書類にも全て署名・捺印が必要ですので、忘れないようご注意ください。

 

遺言書に付言事項を付け忘れる

自筆証書遺言を作成する際にありがちなのが、財産の分け方だけを書いて、なぜこのような分け方にしたのか、理由を書いていないため、相続人同士が不仲になるケースです。

 

事情があり、特定の人に多く相続させたり、逆に特定の人に対する相続額を少なくする場合は、なぜそのような判断をしたのかという理由を「付言事項」として付け加えることをお勧めします。

 

また、あわせて相続人・家族・親族・関係者への感謝の言葉も含めておくと、より相続人の方たちにとって受け入れやすくなるでしょう。

 

遺言書が絶対ではない

遺言書は、法定相続人全員(法定相続人以外の遺贈を受ける人がいれば、その人も含む)の同意があれば、遺言書と異なる内容の相続を行うことができます。

 

ただ、そうなると遺言書を書いた意味がなくなってしまいますので、自筆証書遺言を作成する際は、法定相続人や遺贈を受ける人が納得のできる内容にしておくことが大切です。

 

遺留分侵害に気をつける

配偶者・子供・親は「遺留分」をそれぞれ有しています。(兄弟姉妹には遺留分なし)遺留分の額については、配偶者・子供・父母の存在によりケース・バイ・ケースで異なりますので、ここでは省略します。法的に最低限受け取れる割合という意味合いで捉えておいてください。

 

例えば、子供に一人、相続させたくない子供がいて、その子供に相続させない遺言書を作成した場合でも、もしその子供が相続があることを知ってから1年か、相続した日から10年以内であれば、遺留分減殺請求(今後は遺留分侵害額請求)を行い、遺留分を請求できてしまいます。

 

これまでは、現金の他土地などで現金の代わりとすることができましたが、民法の改正により、全て現金で支払う必要が出てきます。

 

以上のように、遺言書を作成する際は、書き方から相続人等の心情まで、様々な面に配慮する必要があります。

 

一般の人が遺言書を作成すると、上記のようなミスが出てきてしまう恐れがあります。

できれば専門家に遺言作成を依頼することをお勧めしますが、どうしても自分でつくりたい場合は、一から作成するのではなくひな型などをベースに作成を進める方がミスも減るかと思います。

 

遺言書のひな型や書き方については、遺言書パーフェクトガイドで公開されていますので、ダウンロードしてみてはいかがでしょうか。

 

遺言書のひな型(Wordファイル)

 

 

また、法務局で自筆証書遺言を保管してくれる制度も令和2年7月よりスタートしますが、法務局で内容のチェックはしませんので、問題がある遺言でもそのまま預かられてしまい、いざ開封してみると、遺言書の要件を満たしていない・・・という可能性もあります。

 

より確実なのは、専門家のアドバイスを踏まえ、公証人役場で公正証書遺言を作成することと言えます。

 

プロフィール

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専門の税理士法人(経営コンサルティングファーム)で、相続にかかる業務・事業承継など複数の専門業務に関与しております。

 

相続に関し、手がけた件数は主業務では数十件、共同で行った案件も含めると、100件以上の担当になるかと思います。

相続に関して、相続税法の改正は非常に多くの人に影響を与えており、制度変更に対する注意喚起と、長期的な目線での相続対策が必要と感じています。

ご存じの通り、数年前より相続税の課税基準が、以前の基礎控除5,000万円+法定相続人1人1,000万円から、基礎控除3,000万円+法定相続人1人×600万円へと引き下げられました。

 

このことで、都内で一戸建て・マンションを所有しているケースは大半の場合で相続税申告の対象となる可能性が高くなり、地方都市でも同様と言えます。

また、それ以外の一般家庭でもかなりのケースで相続対策や相続税の適正な申告が必要となる事例も見てきました。「うちは普通の家庭だから、相続は関係ない」という言葉は、けして言えなくなりました。(加えて、相続税とは別に、相続人間のトラブルも・・・・)

実際、業務に携わる中で残念に感じたことがあります。

 

それは、「専門家に頼まず、自分で相続手続きをして節約しようとしたばかりに、不適切な申告内容になり、追徴課税などを課され、これなら最初から専門家に頼んでおけば・・・」というケースを、結構な頻度で見聞きすることです。

 

相続税申告について、うちは関係ないと思い込んでいた、知らなかった、自分でなんとかなると思って本を見ながら手続きを行ったなどのケースで、数年後に調査が来て追徴課税、結局専門家に依頼しておけば良かったというケースも・・・・

 

また、なかなか現在外に出にくい状況だからこそ、普通の人にとって、相続の情報を集めにくい状況があります。ですので、多くの方に相続の「基本的な部分」をわかりやすく、専門用語を省きお伝えすることが極めて重要と感じています。

 

当然、当職の職務上、守秘義務などありますので、実例をお伝えすることはできません。

事例を書く場合でも、あくまで一般的なことなど混ぜ、その中に経験などを交え、問題なく公開できる形で皆さんにお伝えしていければと思います。

 

また、法人相手では、事業承継を中心に、企業経営者の支援を行ってまいりました。

事業承継とは、まさに経営を次の世代へ引き継ぐための重要な取り組みで、長期的な目線が要されます。

 

事業承継をスムースに進めるためには、事前準備が必要であり、時には1年~3年の長期的な目線で取り組む必要も出てきます。

経営者にとって、事業とは、自分が手塩にかけて育てた子供のようなものです。事業を適正に継承するには、子供と同じで、「教え、対策を事前に練っておくこと」が大事です。継承者へのレクチャーも必要ですし、税務・相続回りの対策も必要になります。

 

特に、成長した会社にとっては、自社株の額面上の評価額が高騰すると、他の経営に関与しない相続人とのバランスなども含め、慎重に考えることがとても重要になります。

もちろん、自社内や外部のステークスホルダーなどの理解や、事業の承継者自身が、「自分が事業を引き継ぐんだ」という強い自覚がないと、事業承継はスムースに進みません。

 

こちらの部分についても、触れられる機会があれば、いろいろわかりやすく解説していきます。

また「会社の終活」である、スムーズな廃業や事業売却、経営者保証ガイドラインを活用した、信用情報に影響を及ぼさず、自宅等も確保しながら事業をたためる方法や、経営者補償・連帯保証を外す方法などについても、機会があれば扱いたいと思っています。

 

税金は、正しく申告する義務があるとともに、ルールの中で「適切な節税」を考えることが大切です。税金の制度・税体系全体が、個人などではカバーしきれないくらいの複雑さです。

払うべき物は支払うと共に、適切な節税を意識することと、同時に税金を払いながら内部留保、つまり社内に現預金を蓄積していくことのバランスが大切です。

 

節税にばかり走って、税金を納める額を少なくしたばかりに、現預金がない、というのは危険な状態です。

 

2020年の新型肺炎問題で、多くの企業が自粛要請を受けました。

ここでキャッシュや、銀行との融資取引実績があり、信頼を得ている状況であれば、余裕を持って持ちこたえることができますが、キャッシュもない、借入もできないという状況だと、一気に全てが崩れてしまいます。

 

このような、生き残るための経営についても、時折触れられればと思います。

 

当ブログでは上記を踏まえ、

 

・個人の相続の注意点やスムースにするコツ、専門家の活用方法

・企業の事業承継、相続の問題

・会社を継続的に運営するために大切な、お金・税金・節税との付き合い

・会社を穏やかに終わらせる「法人の終活」

 

などを取り上げ、特に初期は個人の相続について、まだまだ人々の相続に対する認識の幅が様々であるため、いろいろな人に「相続」を知っていただけるよう情報発信をしていきたいと思います。