相続登記は法律上の義務になる!新ルールについて紹介



不動産の名義変更は、登記という形で実行されます。そこで売買などを経て不動産を取得したときも、相続で不動産を取得した場合も、登記を行うのが通常です。

しかしこれまで、相続によって取得したときの登記(「相続登記」と呼ばれる。)は推奨されてはいたものの、義務ではありませんでした。無理に登記を行わなくても良かったのですが、このルールが2024年からは変更されました。

今後不動産を相続する方は、ここで紹介する新ルールに留意しましょう。

 

相続登記についての現状と問題点

登記制度は、財産等にかかる権利義務関係を公に示すための制度です。

誰が所有権を持っているのか、どの物件に担保権が設定されているのか、などの情報を公表することで取引の円滑化が図られています。

 

数千万円ものやり取りが行われる不動産について「本当は誰が所有者なのかわからない」といった状況だと、怖くて購入することに気が引けてしまうでしょう。

 

そこで登記を行い、誰でも基本情報をチェックできるようにしているのです。

 

しかしながら、相続した不動産に関しては登記が行われないことも珍しくありません。

売買契約に基づくケースと異なり、相続による取得は自動的に効果が生じるものですので、当事者の意識が比較的低いことも関係しています。

 

その結果、所有者不明の物件が多数現れており、土地活用などの面に社会的な支障が生じているのです。

 

相続後3年以内に登記をしないといけなくなる

上記の問題を解決する目的で、相続登記の義務化がなされました。

法律が改正され、相続によって取得した土地等について3年以内の登記が必須となるのです。

 

3年という期間の起算点は「不動産を取得した事実を認識した日」です。そのため厳密には相続開始日と一致するわけではありません。

 

遺産分割で取得することが確定していなくても登記が必要

相続人が何人もいるときは、①遺言書による指定を受ける、あるいは②遺産分割協議を行う、のいずれかのパターンによって取得者が定まります。

 

登記情報には所有権を取得した方を掲載しますので遺産分割が確定してから登記を行えば良いのですが、もし相続からなかなか取得者が定まらないのなら先に登記を済ませておかないといけません。

 

義務を果たさないとお金を取られる

義務化されることに伴い、その義務を果たさない人に対するペナルティも定められました。

 

最大で10万円の金銭を徴収されるおそれがあります。これは「過料」と呼ばれる行政上のペナルティで、絶対に徴収されるということでもありませんが、そのリスクについては認識しておく必要があるでしょう。

※刑事上のペナルティではないため、前科は付かない。

生前贈与加算のルールについての改正内容を解説



一般に広く知られているルールではありませんが、相続税の計算上とても大事なルールがあります。

それが「生前贈与加算」です。

しかもこのルールは2024年から改正されたので、新たなルールについて押さえておく必要があります。ここでその内容をまとめていきます。

 

生前贈与加算とは

生前贈与加算とは、「ある方が亡くなる前にした贈与についても相続税の課税対象にする」というルールの名称です。

 

本来、贈与財産は贈与税の課税対象です。そのため贈与税の仕組みに沿って計算されるべきなのですが、「相続直前にあたる時期の贈与については実質遺産の前渡しだ」との考えに基づいて遺産同様に取り扱われることになっています。

 

なお、これはあくまで課税上の問題であって、遺産分割の問題ではありません。つまり、贈与を受けた方がその財産を返還しないといけない、ということにはなりません。

 

加算対象期間が3年から7年に延びる

法改正の影響により、生前贈与加算の対象となる期間が延びます。

 

これまでは「相続の前3年以内にあった贈与」を対象としていたのですが、2024年1月1日からは「相続の前7年以内にあった贈与」が対象になります。

 

そのため節税効果を狙う方は、かなり前もって計画を立てる必要があります。

 

改正法施行前の期間は対象外

7年前までさかのぼって加算されてしまいますが、2024年の施行からこの期間は起算されますので、2024年に開始される相続においては実質従前の運用と変わりはありません。

 

変化があらわれるのは3年を経過してからです。

 

例1:2026年1月1日に相続が開始された場合

→ 2023年以降の贈与財産が対象

 

例2:2027年1月1日に相続が開始された場合

→ 2024年以降の贈与財産が対象

 

例3:2028年1月1日に相続が開始された場合

→ 2024年以降の贈与財産が対象

 

例4:2029年1月1日に相続が開始された場合

→ 2024年以降の贈与財産が対象

 

つまり2023年12月31日以前の贈与に関しては、改正法の適用を受けません。

 

前4年~7年の分については控除可能

これまで加算期間に含まれてきた相続前3年以内については特に変わりありません。

 

しかし改正法によって延ばされた4年分(相続開始前4年~7年分)に関しては、その贈与財産の合計額から100万円を控除することができると定められています。

 

そこで、延長された4年分につき加算されるべき額の合計が500万円であったとしても、100万円を控除した400万円が相続財産に加算されます。

生前贈与で相続税を減らせる!節税効果や注意点を解説



生前贈与は相続税対策としてメジャーな手法です。計画性を持って取り組めば、大きな節税効果が得られるでしょう。

どのような理屈で節税ができるのか、具体的にどうやって生前贈与をするのか、そして注意点についてもここで紹介します。

 

なぜ生前贈与で節税できるのか

相続税の課税を受けるのは、主に相続財産です。

他にも遺言書の効果として与えられる財産、本来の相続財産ではないものの実質的に同じものとして取り扱われるみなし相続財産なども課税対象です。

 

つまり、亡くなった被相続人が資産家であるほど相続税の負担は大きくのしかかってくるということになります。

 

もちろん、相続税の額が大きいということはそれだけ大きな経済的利益を受けているということですので単純に相続人が損をするわけではありません。

ただ、相続した財産が現金ではなく不動産などの現物である場合は、それを売却するなどしなければ納税資金の負担が相続人にかかってきます。

 

一方、先に贈与をしておけば、相続財産はその分少なくなります。贈与を前もってしていなくても相続によって家族等に受け取ってもらうことは可能ですが、前渡しによって相続税の課税を回避できるのです。

 

生前贈与はどうやって行うのか

生前贈与は贈与契約に基づく行為です。そこで当事者間の合意が必要となります。

一方的に与えるのではなく相手方の意見も聴く必要があります。そして当然ながら、合意なく財産を譲渡してもらうこともできません。

 

どちらの目線からしても、相手方の意思表示が必要なのです。

 

遺言書であればこのような契約は不要です。遺言者の一方的な行為として財産を与えることができます。

 

節税の観点からいえば、贈与税の負担が小さくなるように生前贈与を行うことが大事といえます。

特別な控除、特例などを駆使して生前贈与を行うことが大事になってきます。

 

生前贈与をするために知っておくべき注意点

生前贈与をする前に知っておくべき注意点の1つ目は「贈与税と相続税のバランスを考えること」です。

 

相続税が回避できてもそれ以上の贈与税がかかったのでは、節税効果はゼロです。そのため単純に「相続財産を減らせば節税できる」と考えてはいけません。税理士に依頼してシミュレーションしてもらい、その結果をもとに検討を進めていくべきです。

 

また、「相続開始直前にした贈与は相続税の課税対象」であることにも注意が必要です。生前贈与加算と呼ばれるルールで、生前贈与として取得した財産でも相続開始前7年以内にされた贈与であるときは相続税の課税対象になります。

 

そこで、死期を悟った段階で急いで生前贈与をしても節税効果を得ることはできません。

遺産分割協議書を作成するときいくらの費用がかかる?



相続人がご自身1人であれば遺産分割協議は行いません。しかし2人以上の相続人がいるときは「誰が何を取得するのか」について協議しなくてはなりません。そしてその記録を残す意味でも遺産分割協議書を作成するのが一般的です。

 

ここでは、この作業にかかる費用について説明をしていきます。

 

遺産分割協議書の作成はトラブル防止のために必要

遺産分割協議は相続手続において絶対に必要というものではありません。「遺産分割協議をしないと相続できない」などと法律で定められておらず、詳細については相続人たちに託されています。

 

しかし相続人の1人でも遺産分割の内容に反対をしているのなら、遺産分割の結果は有効にはなりません。

そのためトラブルを防ぐためにも遺産分割協議によって確実に全員の意見を聞いておくべきなのです。

 

また、遺産分割協議書についても作成が義務付けられていません。書面を作成していなくても遺産分割は有効です。

ただ、この場合はあとになって「私はその協議内容に合意していなかった」などと主張されるリスクがあります。

 

このような言い分を退けさせるため、遺産分割協議書は作成しておくものと捉えておくべきでしょう。

 

書類準備に費用がかかる

遺産分割協議をするためや遺産分割協議書を作成するために、相続人情報や財産情報を確実に整理しておかないといけません。

そこで亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本等や住民票、相続人全員分の戸籍謄本や印鑑登録証明書、そして残高証明書などの財産情報を記録した資料を集めておきます。

 

これら書類を用意するには多少の費用がかかります。

 

役所に行って発行請求をするとき、例えば戸籍情報に関しての書類は1部あたり300円以上が発生します。

印鑑登録証明書や住民票などもおおよそ数百円程度の費用がかかります。

 

一つひとつの費用は大した金額ではありませんが、トータルで見ると数千円以上発生することになるでしょう。

 

また、残高証明書など財産情報についての資料ではもう少し費用が高くつきます。1つの資料を入手するのに1,000円以上、数千円程度の手数料を求められることもあります。

 

専門家に依頼するための費用がかかる

遺産分割協議書は相続人自身が作成することも可能ですが、記載ミスが原因で大きな紛争が起こる危険性があるため、通常は法律に強い専門家に作成を依頼します。

 

そしてこのとき、数万円~20万円程度は依頼費用が発生します。

 

大きな費用がかかるように思われるかもしれませんが、遺産分割を安全に進めるために欠ける大事なコストですので、相続財産の額とも照らし合わせながらできるだけ専門家に依頼するようにしましょう。

相続人調査の必要性とは?調査を行うべき理由と調査の方法について解説

相続が始まると、相続人は遺産を取得することができますが、他にも相続人がいるときは分け合うことになります。しかし「誰が相続人なのか」がはっきりしていないと分割のしようがありませんし、その他手続でも困る場面が出てきます。
ここでは相続人の調査の必要性について具体的に説明し、調査の方法についても紹介していきます。

 

 

相続人の調査が必要な理由


相続人の調査を行う理由としては、①遺産分割協議をするため②相続人全員で行う必要のある相続手続を進めるため、の大きく2つが挙げられます。

 

遺産分割協議をするため


遺産分割協議では、誰がどの遺産を取得するのか、どのように分割するのかが話し合われます。
ただ、注意すべきことがあり、特に重要なのが「遺産分割協議は、相続人の全員がそろって行わなければ無効になる危険がある」ということです。

本来参加すべき人物がいないまま進めた場合、後から参加していなかった相続人が「その遺産分割協議は無効だと主張」してくるかもしれません。

多くの場合は家族など身近な人物が相続人になりますが、隠し子がいたり養子縁組をしていたりすると、予想外の人物が相続人として登場してくることもあります。

そのため必ず、しっかりと相続人の調査は行っておく必要があるのです。

 

相続人全員で行う必要のある相続手続を進めるため


遺産分割協議もそうですが、他にも相続手続の中には、全員がそろって行わないといけないものがあります。

例えば「限定承認の手続」が挙げられます。

限定承認とは、相続の単純承認や相続放棄に並ぶ手続のことで、限定的にする相続の承認を意味します。債務を控除して残った遺産に限って相続をするための手続です。

借金が遺産にどれだけ含まれているのか、資産がどれだけあるのか、が判然としない場面で利用を検討します。

限定承認はリスクを回避できる便利な手続といえますが、手間が大きいという点がデメリットです。財産情報を整理していく面倒な手続がありますし、何より相続人の全員で「限定承認をする」との意思決定をしないといけません。

またこれとは別に、凍結されてしまった被相続人の預金口座を再び使えるようにするためにも、相続人全員の署名・押印が求められることがあります。

 

相続人の調査方法


相続人の調査は、戸籍謄本(または除籍謄本、改正原戸籍謄本)を収集することから始めます。

被相続人の死亡から出生まで遡って一連のものを集めていきます。そして戸籍の中身を読み取り、配偶者や子どもなどの情報をすべて集めていきます。

集めていくだけなら簡単な作業ですが、読み取りが必要ですし、代襲相続が起こるケースなどではさらに収集すべき戸籍の幅が広くなります。
漏れがあってはいけませんので、一般的には行政書士や司法書士などに依頼して対応することが多いです。

 

遺産調査の必要性とは?財産別の調査方法についても紹介

相続開始後は、被相続人が残した遺産を調査する必要があります。この作業はなぜ必要になるのでしょうか。ここでその必要性について解説し、具体的な調査の方法についても紹介していきます。

 

 

遺産の調査が必要な理由


遺産の調査は、①相続承認・放棄の判断をするため②遺産分割協議を進めるため、③相続税の申告をするため、の3つの理由から必要であるといえます。

 

相続承認・放棄の判断をするため

相続をすると、遺産に含まれる債務、例えば借金などの返済義務も引き継ぐことになります。もし資産よりも大きな債務を含む遺産であった場合、相続の承認をすることがマイナスの効果をもたらしてしまいます。

そこであらかじめ遺産の調査を行っておき、相続放棄をすべきかどうかの判断ができるようにしておくのです。

相続人が大きなリスクを負わないようにするため、遺産の調査は必ず行いましょう。

 

遺産分割協議を進めるため


相続人が複数いる場合、遺産分割協議で遺産を分け合うことになります。協議の場では、誰が、どの遺産を、どのようにして取得するのかを話し合いますが、そのためには遺産の内容が把握できていなければなりません。

そこで遺産の調査が必要になるのです。

 

相続税の申告をするため


取得する遺産の額が一定額以上に達することで、相続税の申告や納付の義務が課されます。相続税の申告では相続税の計算が必要で、そのためには取得した遺産の内容と、その価額がわかっていないといけません。

つまり遺産の調査をした上でなければ相続税の申告作業が進められないのです。

 

遺産の調査方法


遺産の調査は、基本的に被相続人の自宅の捜索から始めます。

例えば遺産には、現金や預貯金、有価証券、不動産、動産など、いろんな種類があります。不動産などは現物が自宅にあるわけではありませんが、不動産に関連する書類などが自宅に保管されている可能性が高いです。
相続開始時点で書類が見つからなくても、後々書類が郵送されてくることもあります。

そのためまずは自宅をくまなく探しましょう。

 

特に着目すべきポイントは、預貯金の場合は「通帳」や「カード」です。不動産の場合は、「固定資産税に関する納付書」がないかをチェックします。借金に関しては、「返済に関する明細書」や「金融機関からの督促状」の有無を確認します。

預貯金の口座を開設している金融機関が特定できれば、そこから様々な情報を確認することができます。残高証明書の発行により預金残高を見るだけでなく、取引明細書を発行してもらうことで、借金などの引き落とし情報もわかるようになります。

 

相続の対象外になる財産とは?具体例を紹介

被相続人が生前に所有していた財産は基本的にすべてが相続の対象となります。しかし一部、相続の対象外となる財産もあります。
相続対象外になるということは、相続人だからといって当然に取得できるものではなくなりますし、遺産分割協議で「誰が取得するのか」と話し合う必要もありません。
ここで相続対象外の財産について具体例を挙げて紹介していきます。

 

一身に専属するもの


一身専属権」とも呼ばれますが、被相続人の一身に専属するものについては相続の対象から外れることが規定されています。

このことは民法に定められています。
民法では、「相続が始まると、被相続人が持っていた一切の権利義務が相続人に承継される」と規定されているのですが、但し書きで「被相続人の一身に専属したものはその限りでない」とも明記されています。

例えば生活保護受給権、身元保証人としての地位、従業員としての地位、親権、年金受給権、離婚請求権などのことです。

一つひとつの例を見ればわかるように、相続人であるからといって引き継がれるべきではないものもあるのです。

 

生命保険金の請求権


被相続人が亡くなることで発生する生命保険金の請求権は、相続の対象から外れます。これは被相続人が保険料の負担をしていたとしても同じです。

そもそもこの請求権は、生命保険金の受取人と保険会社との間で交わされる契約に基づく権利です。

そのため相続の対象にはならず、遺産分割の対象となり相続人らで分ける必要もありません。「相続人固有の権利」なのです。

ただし、保険料を被相続人が負担していた場合、実質において保険金の一部は被相続人の財産が変化したものであるとも考えられます。
そこで、相続財産の対象からは外れるものの、相続税の課税対象には入ります。この点には留意しないといけません。

 

死亡退職金


従業員が死亡したことに対して、退職金相当の金銭が支払われることがあります。名称は各社で違うこともありますが、一般的には「死亡退職金」と呼ばれます。

死亡退職金の扱いは、前項の生命保険金と似ています。
相続の対象外となる財産であり、相続人など、受給権を持つ人物固有の権利です。

しかしながら、相続税の課税対象ではあります。
一定の非課税枠が設けられていますので常に税負担が増すわけではありませんが、大きな額を受け取ったときは、注意が必要です。

 

遺族給付金


法令により、特定の遺族に対して給付される金銭があります。「遺族年金」や「遺族扶助料」などです。
こういった遺族給付の制度に従い支給される金銭は、相続の対象外です。受給権者固有の権利となります。

 

相続の対象になる財産とは?具体例を紹介

相続により亡くなった方の財産は、相続人が承継することになります。承継の対象になる財産は「相続財産」と呼ばれ、相続人が複数いるときは遺産分割の対象にもなります。
具体的にはどのような財産が含まれるのでしょうか。以下で例を挙げて紹介していきます。

 

プラスの価値を持つ相続財産の例


まずはプラスの価値を持つ財産について紹介します。相続人にとっては、このプラスの価値を持つ財産が多いほど積極的に相続をする意味があると言えるでしょう。

現金預貯金が例として挙げることができます。


被相続人が財布に入れていた現金、自宅や銀行の金庫に入れていた現金などもすべて相続の対象です。
口座に入れていた預貯金も同様です。なお、預貯金はお金を引き出す債権のことですので、厳密には現金とは異なる性質を持ちます。

その他債権には、貸付金や立替金、売掛金などがあります。被相続人が個人事業主であった場合は、売掛金などの債権についてもよく調査を進めておく必要があるでしょう。

有価証券、つまり株式や投資信託、国債、社債なども広く相続財産の対象ですし、自宅等にある動産もすべて相続人が取得することができます。
動産には、自動車や家財、骨とう品、宝石、美術品などの物が含まれます。

不動産も相続対象です。

 

マイナスの価値を持つ相続財産の例


財産はプラスの価値を持つとは限りません。
マイナスの価値を持つ財産もあり、それが相続財産に含まれていることもあります。そこで相続人としては、前項で説明したようなプラスの財産のみならず、マイナスの財産についてもそれがどれだけ含まれているのかを調べておく必要があります。

借金はその代表例です。


多くの借金を残したまま亡くなった場合、借金の存在を無視して相続してしまうと、相続人は大きなリスクを負うことになります。
不動産など大きな財産を得ることができても、それ以上の借金があった場合は、結果的に相続で経済的にマイナスの影響を受けることとなります。

他にも買掛金やクレジットカードの未決済分、税金や家賃、水道光熱費などの未払い分などもすべて相続対象となります。

 

プラスとマイナスのバランスを考慮して相続放棄を検討


重要なのはプラスの財産とマイナスの財産のバランスに着目することです。

マイナスの財産が大きくてもさらに大きなプラスの財産があれば問題ありません。

しかしマイナスの財産のほうが大きい場合は、「相続を放棄する」という選択肢も視野に入れなくてはなりません。
専門家に依頼するなどして相続財産を調査してもらい、相続放棄を検討しましょう。

 

代襲相続とは?知っておきたい相続の基礎知識

相続には「代襲相続」と呼ばれる仕組みがあります。

親より先に子どもが亡くなっている場面などで代襲相続は起こります。これがどのような仕組みなのか、どのような効果が生じるのか、相続の基礎知識について説明していきます。

 

代襲相続とは


代襲相続は、相続人を代襲すること、つまり相続人としての立場を受け継ぐことをいいます。

本来、相続により親から子へと権利や財産などは引き継がれていきます。


しかし親が亡くなる前に子どもが先に亡くなることもあります。そうなると、その亡くなっている子どもの血筋に引き継がれていく流れが途切れてしまいます。


これを防ぐために代襲相続という仕組みが民法で設けられています。

 

代襲相続の具体例


本件相続の被相続人をA、すでに亡くなっている子どもをB、Bの子どもをCとしましょう。

Aが亡くなったとき、Bは相続人となることができます。そしてその後Bが亡くなったときは、Aから引き継いだ財産も含めてCが相続することになります。これが基本的な相続の流れです。

 

しかしBが先に亡くなっている状態でAが亡くなったとしましょう。
間接的にAの財産も相続するはずであったCが、Aの財産を受け取れなくなるようにも思えます。

ここで代襲相続が起こります。Bを被代襲者、Cを代襲者とする代襲相続が起こります。

するとCはAの相続における相続人となり、相続権を取得します。

 

代襲相続ができる人物


上の例のように、被相続人から見た孫は代襲相続をすることができます。

 

先に亡くなった被代襲者が被相続人の養子であっても同様です。


ただ、代襲者である孫が生まれてから養子縁組を交わしたときは別です。相続関係を持つのは養子縁組を交わした当人らのみです。

被相続人の兄弟姉妹に関しても代襲相続は起こります。

被相続人に配偶者や子どもがおらず、親もすでに亡くなっているとしましょう。このとき、兄弟姉妹が相続人になれるのですが、その時点で兄弟姉妹が亡くなっていて、その子どもがいるときは当該子どもが代襲人になります。

 

再代襲も起こる


代襲相続をする孫も先に亡くなっており、さらにその孫に子ども(ひ孫)がいるときは、ひ孫に関して再代襲が起こり、相続権を得ることができます。

 

再代襲まで起こると、相続権を得る人物の数がかなり増え、1人あたりの取り分はかなり少なくなると思われます。

代襲人の取り分は、被代襲者と同じですが、代襲人が複数いるとさらに分割することになるからです。

なお、被相続人の兄弟姉妹に関する代襲相続では、再代襲は起こりません。
つまり、被相続人の姪っ子や甥っ子の子どもが相続人となることはありません。

 

相続が始まってから相続人がすべきこととは?手続の流れを紹介

ある方が亡くなり相続が開始されると、相続人は財産を取得することができますが、その裏では様々な手続を進めていくことになります。具体的にどんなことをする必要があるのか、流れに沿って解説していきます。

 

流れ1:遺言書がないか確認


遺言書が作成されているかもしれません。まずは遺言書が作られていないかどうか、亡くなった方の自宅を探しましょう。公証役場に保管されている可能性、法務局に保管されている可能性もあります。これらの機関にも問い合わせます。

 

流れ2:相続人を探す


遺産分割をする前に、遺産を分け合う相続人を探さなくてはなりません。

そこで、亡くなった方の戸籍謄本から相続人を探し出します。

亡くなった方の死亡時点の戸籍謄本から、出生時の戸籍謄本まで遡って取得していきます。過去に婚姻や離婚、養子縁組をしているときには予想外の相続人が登場することもありますので要注意です。

 

流れ3:遺産の内容を調べる


亡くなった方がどんな財産を持っていたのかを調べましょう。

不動産や現金、株式、預金など、あらゆる財産をくまなく探していきます。

借金についても忘れてはいけません。

もし資産で弁済しきれない借金が残っているときは、「相続放棄」も検討します。そのまま相続してしまうと相続人が自己破産に追い込まれるリスクもあるからです。

 

流れ4:遺産分割協議を行う


探し出した相続人らで、「どのように遺産を分けるか」の話し合いを行います。これを遺産分割協議と呼びます。

このとき遺産の取り合いで揉める可能性もありますので要注意です。法律の専門家に相談するなどして具体的な対処法を検討しておきましょう。


また、専門家に頼んで「遺産分割協議書」も作成してもらいましょう。この書面が今後の名義変更手続などで役に立ちます。

 

流れ5:相続税の計算と申告


相続人それぞれに取得する財産が決まれば、相続税の計算を行いましょう。取得した財産の額が大きい場合、納めるべき相続税の金額も大きくなります。

ただし常に相続税が発生するわけではありません。


基礎控除を上回る遺産総額がなければ相続税の納税および申告自体も必要なくなります。基礎控除額は最低でも3,000万円(相続人がいるときは最低でも3,600万円)ですので、遺産が3,000万円を超えて存在していることが課税の最低条件となります。

 

流れ6:財産の名義を変える


現金や家財などは相続に際して手続は必要ありませんが、名義を登録している財産については、取得者が名義変更の手続を進めなくてはなりません。

 

特に不動産を取得した方は要注意です。現行法では義務となっていませんが、登記申請をすることになります。司法書士に依頼するなどして手続を進めましょう。

 

相続税の計算・申告を税理士に依頼することのメリットを紹介!

相続税の申告をするまでには様々な手続を進めなければならず、集めるべき書類も多岐にわたります。そのため基本的には申告作業は税理士に頼むことになります。


費用が発生するなどの難点はありますが、以下で説明するように、税理士に依頼することで多くのメリットが得られます。

 

相続税の申告にかかる手間が減る


依頼するときの契約内容にもよりますが、税理士に頼むことで、相続税の申告にかかる多くの手間は依頼主にかからなくなります。

 

負担を軽減し、他のことに時間も体力も避けるようになります。

書類を準備するだけでも大変な作業です。

被相続人の戸籍謄本、それも被相続人が生まれてから亡くなるまでのすべてを取得しないといけません。

相続人についても全員分の戸籍謄本を集め、印鑑証明書も準備します。

遺産分割協議の内容を記した協議書も作成しないといけません。

 

その他遺産の内容に応じて準備すべき資料は増えますので、慣れていない一般の方だと大変な作業となるでしょう。

 

節税対策が取れる


税理士に相談することで、相続税の節税ができることもあります。

税制は複雑で、広範な知識を備えていなければ高い節税効果を得ることはできません。

間違った方法で節税をしていると、脱税になってしまい、税務署からペナルティを課されるリスクも生まれてしまいます。

 

そのため、特に遺産総額が大きく、大きな相続税が発生しそうなときには税理士に依頼することが推奨されます。大きな節税効果が得られれば、税理士への報酬以上の経済的な恩恵が得られるかもしれません。

 

税務調査にも対応してもらえる


相続税に限らず、税の申告内容に疑念を抱かれたとき、後で税務署から調査を受けることがあります。その税務調査では、再度申告に関わる資料を準備し、申告内容が正しいことを示さなければなりません。

個人的にその対応をするのは大変です。

しかし税理士に頼んでいれば、税務調査への対応も任せることができ、安心して調査当日を迎えることができるでしょう。

 

相続税の計算が正しく行える


相続税の計算は複雑です。単純に、取得した価額に税率を掛け算するだけで求められるものではありません。

財産の評価額を把握するだけでも大変な作業で、間違った計算をしていると、追徴課税を受ける危険があります。

 

間違った申告により「延滞税」や「過少申告加算税」、「重加算税」を課されることもあります。

延滞税とは、本来納税すべき期日に遅れたことに対するペナルティです。利息相当の延滞税の負担がかかります。


過少申告加算税とは、申告および納税をしたものの、金額が足りていなかったときに課されます。不足分の10%が加算されます。


重加算税は、遺産を隠していたときなど、悪質と評価されたときに課されます。納付すべき金額の35%と、かなり重く課税されます。

 

 

トラブルなく遺贈をするには?押さえておくべきポイントを紹介

法令に従い適式に遺言書を作成できていれば、遺贈をするという目的自体は果たすことができます。しかし遺贈のやり方次第では、親族間あるいはその他関係者間で争いが生じる可能性があります。


そのため遺言者は事前にそのリスクを認識し、トラブルを避けるような形で遺言書を作成することが大事です。ここでそのポイントを紹介していきますので、参考にしていただければと思います。

 

相続人から不満が出ないか考える

遺贈をすると、遺言者と特別の繋がりを持っていた人物に遺産を分け与えることができます。相続人になれなくても、例えば孫や友人などであっても遺産をあげることができます。

 

ただ、その一方で相続人の取り分が減っていることにも目を向けなくてはなりません。
遺贈をすることに理解がある相続人ばかりなら良いですが、遺産の取得に過度な期待を持っている人物がいるとトラブルに発展するリスクが高まります。

 

そのため、受遺者と相続人とのバランスに大きな偏りが生じないように配慮しましょう。


事前に推定相続人と話し合っておいて、遺贈をすることにつき了承を得ておくのが一番無難です。

 

それが難しい場合でも、遺産の大半を持っていくような遺贈としていなければ揉めずに済むかもしれません。

 

残された家族の生活を考える

一家の大黒柱が亡くなると、その家族は生活に困ってしまいます。唯一の頼りとなるのが遺産です。
にもかかわらずその遺産がすべて第三者に渡ってしまうと、生活がままならなくなってしまいます。

 

遺留分」と呼ばれる一定割合に関しては、亡くなった方の配偶者・子・親などは受遺者に請求することができるのですが、別途請求をしなければ回収することができません。


遺留分の請求により受遺者と揉める可能性もありますし、遺留分だけで生活を支えるのが難しいケースもあります。

 

そのため、遺言書を作成する際には、自分を頼りに生活している家族のことにも目を向けることが大切です

 

遺言執行者を置く

遺言執行者」とは、遺言書の内容を実現することを職務とする人物のことです。

 

この人物を指定しておくことで、遺贈がスムーズになり、管理不足による遺産の散逸も防ぎやすくなります。

 

専門家に相談して遺贈方法を考えること

法律に精通していない方だけで対応するのは難しいです。
そもそも遺言書を正しい形で作成するだけでも大変な作業です。

 

その上でトラブルを防ぐために様々な事情を考慮しなければなりませんので、できれば法律の専門家に相談し、アドバイスを得ましょう

 

現状を伝え、そのケースにおいてありがちなトラブルの事例を聞き、それを防ぐにはどのような手段が有効なのか、と対策を練っていきましょう。