相続が始まると、相続人は遺産を取得することができますが、他にも相続人がいるときは分け合うことになります。しかし「誰が相続人なのか」がはっきりしていないと分割のしようがありませんし、その他手続でも困る場面が出てきます。
ここでは相続人の調査の必要性について具体的に説明し、調査の方法についても紹介していきます。
相続人の調査が必要な理由
相続人の調査を行う理由としては、①遺産分割協議をするため、②相続人全員で行う必要のある相続手続を進めるため、の大きく2つが挙げられます。
遺産分割協議をするため
遺産分割協議では、誰がどの遺産を取得するのか、どのように分割するのかが話し合われます。
ただ、注意すべきことがあり、特に重要なのが「遺産分割協議は、相続人の全員がそろって行わなければ無効になる危険がある」ということです。
本来参加すべき人物がいないまま進めた場合、後から参加していなかった相続人が「その遺産分割協議は無効だと主張」してくるかもしれません。
多くの場合は家族など身近な人物が相続人になりますが、隠し子がいたり養子縁組をしていたりすると、予想外の人物が相続人として登場してくることもあります。
そのため必ず、しっかりと相続人の調査は行っておく必要があるのです。
相続人全員で行う必要のある相続手続を進めるため
遺産分割協議もそうですが、他にも相続手続の中には、全員がそろって行わないといけないものがあります。
例えば「限定承認の手続」が挙げられます。
限定承認とは、相続の単純承認や相続放棄に並ぶ手続のことで、限定的にする相続の承認を意味します。債務を控除して残った遺産に限って相続をするための手続です。
借金が遺産にどれだけ含まれているのか、資産がどれだけあるのか、が判然としない場面で利用を検討します。
限定承認はリスクを回避できる便利な手続といえますが、手間が大きいという点がデメリットです。財産情報を整理していく面倒な手続がありますし、何より相続人の全員で「限定承認をする」との意思決定をしないといけません。
またこれとは別に、凍結されてしまった被相続人の預金口座を再び使えるようにするためにも、相続人全員の署名・押印が求められることがあります。
相続人の調査方法
相続人の調査は、戸籍謄本(または除籍謄本、改正原戸籍謄本)を収集することから始めます。
被相続人の死亡から出生まで遡って一連のものを集めていきます。そして戸籍の中身を読み取り、配偶者や子どもなどの情報をすべて集めていきます。
集めていくだけなら簡単な作業ですが、読み取りが必要ですし、代襲相続が起こるケースなどではさらに収集すべき戸籍の幅が広くなります。
漏れがあってはいけませんので、一般的には行政書士や司法書士などに依頼して対応することが多いです。