相続が発生した場合、どんなときにどんな専門家を頼ればいい?

相続でよく聞かれることととして、「相続についていろいろ悩みがあるんだけど、誰に相談していいかわからない」という話を聞くことがあります。

 

確かに、広告などで「相続手続のお手伝いをします」という宣伝なども見かけます。

 

ただ、状況や困りごとに応じて、どこに頼むか、どんな専門家へ依頼するかというのはよく考える必要があります。

 

今回は、相続に関わる専門家と、どういう時に依頼をすればいいのかについて述べていきたいと思います。

 

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土地家屋などの名義変更が発生する場合は司法書士に依頼

多くのケースでは、現金・預金などだけでなく、土地家屋の相続も行うことがあるかと思います。

 

土地や家屋の名義変更を行う上では、「司法書士」に手続きを依頼する必要があります。(相続人が行うことも不可能ではないですが、手間がかかります)

 

相続人間で特にもめることもなく、現預金も少ない、地方なので土地・家屋の相続税もかからないという場合は、司法書士に名義変更を依頼する事が望ましいでしょう。

 

相続税の発生が想定されるケースなどでは税理士に依頼

少し前までは、相続税の計算基準が5,000万円+1,000万円×法定相続人の数だったため、ある程度の資産がある家庭が相続税の対象となっていました。

 

しかし現在は、相続税の基礎控除額3,000万円+600万円×法定相続人の数となっています。最低でも6,000万円だった相続税のかかる基準が、最低でも3,600万円とかなり引き下げられました。

 

一定の財産があったり、首都圏や地方都市に自宅などがある場合は、多くのケースで相続税の対象となる可能性があると考えた方がよいでしょう。

 

相続税の計算については、非常に慎重さを要する手続きです。手続きや書類作成・記載内容に漏れがあると、後でトラブルの原因になります。

 

また、骨董品やコレクションなど「これは申告しないでも良いだろう」と、相続人が主観的な判断で考えると、申告漏れなどトラブルに繋がる場合もあります。

 

税理士事務所・税理士法人の場合、多くの相続のケースを手がけていますので、相続において申告すべき事や相続税の計算、手続き、「非課税財産」という申告しなくてもよい財産など、様々な観点から、「適切な相続税の申告」をサポートしてくれます。

 

特に財産面で、相続税の課税対象になるかどうかが微妙な場合は、税理士に事前相談し、「相続税がかかる可能性がある」「相続税がかかる」というケースの場合には、相続税申告手続きの代行をお願いする事が大切です。

 

また、税理士事務所・税理士法人の場合、他の専門家とのネットワークも充実しています。

 

後ほど述べる相続手続きの代行業者と同様、相続全体の窓口として、相続税以外の手続きをまとめて行ってくれる事務所も存在します。

 

相続人間で争いがある場合は弁護士

相続の割合や遺言書の内容に納得しない相続人がいるケースなどは、弁護士に依頼することを視野に入れる必要があります。

 

財産分与の割合などに関しては、相続人同士で話しても、いろいろな感情などもまじってまとまらないケースも想定されます。

 

まず弁護士を代理人として立てて、納得しない相続人と交渉します。

それでも相続人が納得しなければ、

  1. 家庭裁判所を通した遺産分割調停手続
  2. 家庭裁判所での遺産分割審判の申立

という形で手続きが進んでいくことになります。

 

いずれにせよ、弁護士費用も含め、手続きが増えるほど時間とコストがかかりますので、一定の妥協点を設けておくことが望ましいと言えます。

 

相続代行手続きを行う会社・事務所・信託銀行

相続手続きの代行を行う会社や事務所も、近年は増えてきました。

 

相続にかかるサービスをワンストップで行ってくれるのが強みです。必要に応じて、税理士・司法書士などの専門家へ手続きを依頼したりしてくれるので、一度お任せすれば、後は指示に従って書類を集めるだけと言う形で、手続きの簡略化を図ってくれます。

 

ただし、費用に幅があることと、代行を依頼する事業者が、様々な意味で信頼できるかは念頭に置いた方がよいでしょう。

 

以上、相続手続きに関与する専門家・事業者などについてまとめました。

 

相続手続きは、複雑かつセンシティブな内容を扱うものです。依頼先に関しては、最初の相談などでしっかりと話を聞き、信頼できるかを含めて考えていく必要があると言えましょう。

この人には相続させたくないという親族を、相続人から廃除できるのか?

今回も相続トラブル系の話です。

 

親などの立場で、「こいつには相続させたくない!」という人がいるケースもあるかもしれません。

 

こういう場合、「相続廃除」という制度があるにはあるのですが、非常に条件が厳しいと言われています。

 

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被相続人を相続から廃除する条件と相続欠格事由

 

民法892条・推定相続人の廃除では、

  • 被相続人に対して虐待
  • 被相続人に重大な侮辱を加えた
  • 推定相続人に著しい非行

というどれかの条件があれば、被相続人を相続から廃除、遺留分の請求も認めませんよ、という運用をしています。

 

また、相続欠格事由というのも存在し、

  • 被相続人や、自分より相続で優先度の高い人物を殺害したり、殺害しようとした場合
  • 詐欺や強迫で、被相続人の遺言を取り消させたり、遺言書を偽造・変造・破棄の他、隠すなどした場合

など、被相続人として著しく不適切な行為を行った場合も、相続人から外されることとなります。

 

遺留分の請求も認めないというのは相当重い措置です。

 

普通は遺言書で、「○○には相続させない」と書いてあったとしても、子ども等(子どもがいない場合は親。兄弟姉妹は遺留分の請求権を有しない)の被相続人は、遺留分として、一定割合の金額を請求する権利があります。

 

しかし、相続から廃除されると、その遺留分の請求も認められず、完全に相続できる金額が0となります。(推定相続人から廃除された人物に子どもがいる場合は、代襲相続という形で子どもの方は遺留分の請求権を有します)

 

相続廃除には、「この人はよほどひどい人です」という人物であり、行状を客観的に立証できないと廃除できない

相続廃除は家庭裁判所に申し出ることになりますが、申し出の上で、具体的な廃除の理由を詳細に示す必要があります。(遺言で相続人廃除の申立をする事も可能です)

 

裁判所も、相続廃除の手続きに関しては、非常に慎重な判断を行うため、実際に相続廃除にまで至るケースというのは、さほど多くありません。

 

廃除の理由としては、

  • 被相続人自身を身体的・精神的に虐待した
  • 被相続人の財産に関して勝手に処分した
  • 様々な暴力行為などがあった
  • 重大な犯罪行為を行った、重い有罪判決を受けた
  • 被相続人の配偶者が、婚姻を継続しがたい問題ある行為を行った

など、身体・精神・金銭面で被相続人に著しい被害を与えるケースであって、はじめて廃除が認められます。

 

その際も、いつ、どこで、具体的にどのような行為を受けたかなど説明しないと行けず、なかなか一般の人が手続きをするのは難しいと思います。

 

弁護士に相談して、手続きをしてもらうことも可能ですし、普通に申請するよりは、認められる可能性も高くなりますが、実際の所は、専門家を使ってもかなりハードルが高いかなと思います。

 

それゆえ、もし特定の相続人を相続から廃除させたい場合は、ともかくされた問題のある事項の記録を、できるだけ残しましょう。

 

手書きでも、電子データでもいいですが、できるだけ、いつ、どのような行為をされたかなど、できる限りの証拠を集め、残しておくことが重要です。

 

現実的な落とし所としては、遺言で「相続させない」としつつ、遺留分の請求権がある場合は、遺留分は遺留分減殺請求に備え、確保しておく

このように、相続人の廃除は簡単ではありません。

 

生前に問題のある相続人の廃除請求をしておくか、遺言書で相続人廃除の事と、問題ある相続人には財産を相続させない旨書くなどし、「うまく行けば問題のある相続人の相続0、最悪でも、遺留分の請求(なお、別の記事でも書きましたが、遺留分があるのは子・孫などの直系卑属、子がいなければ第二順位の親などの直系尊属のみで、兄弟姉妹には遺留分はありません)をされるだけにとどめるよう、工夫した方が良いでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

相続トラブルでたまに聞く、相続人が遺言書を破棄・隠した場合どうなる?

今回も相続トラブルの話です。

 

私は関わったことがありませんが、もし相続人の誰かが、遺言書を見て、「これは俺にとって不利に書かれている遺言書で許せん!!シュレッダーにかけてやる」などと、遺言書を勝手に処分する、というトラブルが発生したらどうなるか、という話です。

 

(なお、下の画像に突っ込みを入れておくと、財産目録など一部以外の多くの部分の自筆証書遺言は、ワープロ作成ではダメで手書きの必要があります

 

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遺言書を勝手に破棄・隠匿(隠すこと)は当然犯罪で民事上・刑事上の責任も。そして相続人から廃除されることも!

普通に考えると想像が付くことですが、遺言書を破棄したり、偽造・変造を行う、また遺言書作成の過程で、相続人の誰かが被相続人を強迫などして、本人の意思とは異なる遺言を作成させるなど行うと、相続人として不適格となる、いわゆる「相続欠格事由」に該当し、相続人となることはできません。

 

ただし、本人が相続欠格者となった場合でも、その相続欠格者に子どもがいた場合、代襲相続という形で、悪いことをした人には相続権がないけれども、子どもには相続権が発生する・・・という、なんとも言いがたい状態になります。

 

また、遺言書を偽造・変造したり隠匿(隠す)ことによって、他の相続人など関係者に損害を与えた場合は、偽造・変造・隠匿などを行った人は、被害者から民事で損害賠償責任請求を受ける可能性があります。

 

また、当然ですが刑事上の責任もあり、偽造であれば、刑法159条1項の私文書偽造罪で5年以下の懲役刑、変造も刑法159条2項で同じ5年以下の懲役刑となっています。

 

また、書類の破棄の場合は私用文書毀棄罪で5年以下の懲役刑となります。

 

私用文書の毀損・書類破棄に関しては、「親告罪」となっており、告訴ができるのは、被害者・被害者の法定代理人、その他つながりの強い親族などに限られます。もし遺言書の破棄などがあった場合は、利害関係者が申し出る必要があります。

 

自筆証書遺言の偽造・変造・破棄がされていた場合の対策は?

遺言書に手を加えてしまうとなると、完全に弁護士の先生が関与する必要のある案件です。

 

早急に弁護士に相談し、調停や、偽造などに関する訴えを提起するなど、対策を行う必要があります。

 

ただ、自筆証書遺言の偽造・変造・破棄などを追求するには、それ相応の根拠が必要です。立証に関しては、弁護士にも相談しながら慎重に進めて行くべきでしょう。

 

これからであれば、自筆証書遺言の偽造・変造・破棄などを防ぐためにも、法務局の遺言保管制度を、親などに利用してもらうようにするのが望ましいでしょう。

 

法務局での自筆証書遺言の保管は、費用も3.900円とさほどかからず、後から新しい遺言書と差し替える手続きも可能です。(その際は別途手数料はかかります)

 

公正証書遺言の場合は、遺言書自体が破棄されても、原本の写しを公証人役場で取得できる

上記のように、自筆証書遺言だと、偽造・変造・破棄などの可能性もありますが、公正証書遺言の場合は、前の記事でも触れたように、公正証書遺言の原本が公証人役場に保管されています。

 

遺言作成者が保持しているのは、正本と謄本(正本のコピー)ですが、大本の書類である原本に関しては、公証人役場で調べることができますので、少しでも公正証書遺言に疑わしい部分(公正証書遺言なのに、なぜか書き換えられているなど)があれば、公証人役場に予約をして必要書類を持参、遺言検索を行い、公正証書遺言が存在する場合は、公証人役場で公正証書遺言の写しを取得することができます。

 

いずれにせよ、相続において遺言書の偽造・変造・破棄などの恐れがあるということは、犯罪性も含め、非常に問題があります。弁護士に相談し、もし万一本当に遺言書に関する不正行為が行われていれば、弁護士に相談、まずは穏便に落とし所を探ることを考え、それでもうまく行かない場合は、民事訴訟・刑事訴訟なども視野に入れた方が良いでしょう。

相続が発生しているのに、中心となる被相続人が遺言書を見せてくれないというトラブルが発生した場合、どうするか?

相続となると、財産の多い・少ないにかかわらずトラブルになることが、意外とあります。

 

特に、相続人間での、財産だけでなく感情も含めたトラブル。

 

今回、事例については多少アレンジはしますが、実際に相談をいただいた事を下敷きに、相続で時折ある「遺言書はあるらしいけど、他の相続人が遺言書を見せてくれない」というトラブルの場合、どう対処するべきかということ、公正証書遺言の場合であれば、他の相続人に知らせずに内容を確かめる方法について書いてみましょう。

 

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他の相続人が遺言書を見せてくれない場合の対処法

 

まず、最低限必要な対処としては、遺言書があると他の相続人が主張する場合、

  • 自筆証書遺言の場合、遺言書の検認を行うよう強く請求すること(相続人であれば、誰でも請求権があります)
  • 公正証書遺言の場合、遺言公正証書の原本を見せてもらうこと

が重要です。

 

自筆証書遺言の場合、7月より始まった法務局での遺言書保管制度を利用している場合以外は、家庭裁判所で遺言書の検認を受ける義務があります。

 

遺言書の検認とは、亡くなった人が自筆で書いた遺言書が正当なものであるかを、確認する手続きです。相続人の中の一人の請求により、裁判所において全相続人の立ち会いの下、変造など不正がないかを確認します。

 

そのため、亡くなった人が自分で書いた遺言が存在するというのに、相続人の一部の人しか遺言を確認していない、という状況は、本来あり得ないのです。

 

そのため、遺言書の検認をするよう相続人に依頼しましょう。

 

公正証書遺言の場合はどうする?

では、公正証書で遺言を作っている、でも他の相続人が遺言書を見せてくれないという場合はどのように対応したらよいでしょうか。

 

実は、公正証書遺言の場合は、自身も相続人であれば、他の相続人に知らせることなく、遺言書の内容を確認することができます。(ただし、被相続人が亡くなっている事が前提です)

 

公正証書遺言の原本は、被相続人が公正証書遺言を作成した公証人役場に保管されています。

 

公証人役場はそれぞれ独立して運営されています。どこの公証人役場で遺言を作成したかがわからない場合は、まずはどこの公証人役場で遺言が作成されたかを確認する「遺言検索」の手続きを行う必要があります。

 

遺言検索の手続きは、公証人役場へ直接行く必要がある

現在も新型コロナウイルスの影響がある状況ではありますが、原則として、遺言検索に関しては、最寄りの公証役場に、電話で予約をした上で、必要書類を揃えた上で出向く必要があります。

 

必要書類としては、

1 亡くなった人と相続人である自分の関係がわかる戸籍謄本(市区町村役場の窓口で、「相続に使うので、亡くなった○○と私のつながりがわかる戸籍一式をお願いします」と言えば大体出してくれます。ただし、戸籍が一つの市町村だけでないケースもあり、この場合は戸籍が移っている市区町村の方にも、郵送で請求をかける必要があります。)

2 亡くなった人の除籍謄本

3 自身の身分証

4 認印

というパターンが多いですが、念のため公証人役場に電話したときに、必要な書類を確認してメモして下さい。

 

必要書類一式を揃えた後、公証人役場へ行き、遺言検索の手続きを行い、公正証書遺言が存在するかを確認、その後、公正証書遺言が存在することがわかれば、「謄本交付」という、公正証書遺言の写しに近い要素を持つ書類の交付を受けるようにしましょう。

 

なお、費用に関しては、1枚250円×紙の枚数となっており、遺言検索は無料です。

 

戸籍取得では千円弱~数千円の費用がかかりますが、両方併せても、手間こそかかれど、費用はさほどかかりません。

 

このように、遺言があるという場合、「本当に遺言書が存在するのか、自筆証書遺言なら検認を受けたのか、公正証書遺言なら、公証人役場に原本があるのか」という点は注意するようにして下さい。

相続人以外でも相続が受けられるケースも?特別の寄与の制度とは?

相続に関していろいろとルールが変わりますよ、ということは解説していますが、「特別の寄与の制度」という制度は、大きな変更点の一つと言えます。

 

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特別の寄与の制度とは?

これまでは、相続人以外の人が、被相続人(なくなった人)の介護にいくら尽力しても、相続財産を取得することができませんでした。

 

よくあるケースとして、被相続人と同居している長男、別居している次男、長女の三人がいて、その3人にそれぞれ配偶者がいたとします。次男・長女は、疎遠で、介護を手伝うどころか、会いにも来ません。

 

でも、長男には子供が産まれることがなく、しかも被相続人より先に事故で亡くなったとしましょう。そして配偶者に当たる妻が被相続人の介護をしてきて、その後被相続人が死去。

 

この場合、介護に尽力した配偶者は、どれくらいの相続ができるでしょうか?

 

実は、これまでの制度なら、遺言などがない限りは、1円も相続できませんでした。義理の父であっても、です。

 

一方で、次男・長女で被相続人の遺産を半分ずつ、総取りできてしまいます。

 

これは介護で頑張った配偶者が気の毒でしょう、ということで、2020年7月の民法改正後は、相続開始後に、配偶者が相続人に対し、金銭の請求ができるようになりました。

 

具体的に、いくらの額が請求されるという事は明確化されていませんが、介護の労力に報いるだけの金額は請求できるようになると思われます。

 

ただ、何も手続きをしなければ請求はできませんし、これまでどれだけ介護に尽力してきたかを記録、立証できる日誌やその他証拠など、「これまで介護でこれだけ労力を払ってきたんですよ」と言える根拠資料は必要でしょう。

 

また、実際に請求を行う上では、弁護士など専門家の助力が必要になる可能性があると想定されます。

 

具体的な請求額が決まっていないからこそ、事前に相続対策を専門家に相談した方がベター

法務省のパンフレットなどでも、特別の寄与の制度で、寄与した人がいくら請求できるということは、数字で明確化されていません。

 

だからこそ、今後相続対策を考える上では、介護に尽力した人の分も踏まえて、遺産分割案を検討していく必要があります。

 

これは、相続人だけで話し合いがつけばベストですが、心配な点がある場合は、事前に専門家に相談して、対策・特別寄与者への配慮を考えておいた方がよいでしょう。

 

注意点は、被相続人の親族が無償で非相続人の療養看護等を行っていること

特別の寄与の制度で注意すべき点は、親族が「無償で」療養・看護を行っていることが前提と言うことです。

 

つまり、生活費を受け取ったり、被相続人の財産から生活費を出していたりした場合は、無償ではないため、特別の寄与の制度の対象外になります。

 

そのため、義理の父・母の療養看護等を行っている場合は、お金を引き出すときに、「この引き出したお金は療養看護のためだけに使いました」ということが立証できるよう、レシートや出納記録など、資金使途が療養看護等だけのものであることを明確にし、自身の為に使っていないことを証明できるようにする必要があります。

 

裁判にせよ、調停にせよ、あらゆる法的手続きは、記録・証拠が全てで、いくら療養看護等に尽力しても、それを第三者に立証できる記録や資料を残しておかないと、いくら権利があっても活用できませんし、逆に、きちんと記録をしておかないと、被相続人の財産を使い込んだと誤解されてしまう可能性さえあります。

 

そのため、療養看護等をせざるを得ない状況、かつ相続権のない人は、ぜひ「無償で療養看護等を行いました」と立証できるよう、記録や資料、通帳での引き出し時には、何のために利用したかを通帳とノートにメモするなど、きちんと後から立証できる証拠を残しておくことを、強くお勧めします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2020年7月の民法改正で、遺留分制度が見直し!注意点は?

2020年7月の民法改正による相続ルールの見直しについて、今回も説明しますね。

 

まず、遺留分という言葉について、なじみがない人もいらっしゃると思うので、簡単に説明します。

 

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遺留分とは?

遺留分とは、配偶者と子供(子供がいない場合は親)が、一定の割合の預貯金・不動産などを、遺言などの内容にかかわらず請求できる権利です。遺留分は、黙っていてももらえるものではなく、遺留分を有する側から、「遺留分減殺(げんさい)請求」という手続きを行わないといけません。

 

ここからより詳しく説明していこうとすると、長くなるので、ざっくりと「配偶者・子供は相続財産の一部を遺言にかかわらずもらえる権利があるんだ、子供がいなければ両親が権利を持つんだ」ぐらいに抑えておいて下さい。(ちなみに、兄弟姉妹は遺留分がありません)

 

遺留分は、土地建物などの共有ではなく、お金で直接支払って!という形に変わる

これまでは、遺留分に関して、現金ではなく、土地建物の一定割合を相続させることでが可能でした。

 

しかし、2020年7月からは、「遺留分の支払いは現金で!土地家屋はNG」という形になります。

 

ただ、遺贈や贈与を受けた側からすると、遺留分の請求者から「いきなり現金で払って!」と言われても、すぐに対応できるとは限りません。一番大変なのが、会社の土地建物など不動産の資産は多いけど、現預金は少ないというパターン。

 

この場合は、裁判所に対し、「すぐに金銭を用意することはできないので、支払期限の猶予を求める」という手続きができます。

 

これも法務省のパンフレットの事例を元に説明してみましょう。

 

経営者(ここでは被相続人にあたる)が亡くなり、妻は既に死去しており、相続人は長男・長女の二人の状態。

 

被相続人の財産として、評価額1億2千万円の土地と、預金が1,200万円あったとします。

 

被相続人は、「私の事業を手伝っていた長男に会社の土地建物全て(評価額1億2,000万円相当)を、長女には預金1,200万円を相続させる」という遺言を作成。

 

このケースで、妻が亡くなっており、相続人は子供2人という状態だと、遺留分は、半分の半分、つまり4分の1となります。

 

そこで、具体的に遺留分侵害額(長女側がもらえる権利がある額)を計算すると・・・

 

 

1億2,000万円+1,200万円=1億3,200万円

1億3,200万円×4分の1=3,300万円

つまり、長女側は3,300万円をもらえる権利があるわけです。

 

これまでだと、1,200万円の現金に加えて、さらに2,100万円の現金を用意するのは難しい、ということで、土地家屋を共有することで、直近の金銭負担を減らせるようになっていました。

 

しかし、民法改正後は、3,300万円を現金で支払わないといけません。

 

延納の手続きはできるとは言え、現金がなければ借入等を行い、現金を用意せざるを得なくなるため、事業や家を承継する人に取っては大変です。

 

一見、土地家屋の物納もOKがいいんじゃない?と思えるが・・

この話を聞くと、2,100万円の分も、現金の代わりに物でOKの今の制度がいいのでは?という人も多いでしょう。

 

しかし、物納をOKにすると、土地建物が複雑な共有割合になり、更に、長女が死亡するなど更に相続が発生すると、共有分が更に分割され・・・と、どんどん土地家屋の所有権者が増え、権利関係が複雑になってしまいます。処分や建て替えをしようにも、基本的には所有者全員の合意がないと手続きができません。

 

そこで、物納はNG、あくまで金銭債権(現預金)で、遺留分を請求するという形になりました。

 

正直、土地を引き継ぐ方は、今回の改正で不利になる一方、これまでは「ハンコ代」などの形で、遺留分ほどではないけれども、まとまった金額をもらうことで妥協した、土地を引き継がない相続人に関しては、遺留分として一定額を現金で請求できる、という有利な状況になります。

 

そのため、特に土地家屋を相続する、事業を相続する側は、これまで以上に他の相続人、その中でも遺留分を有する人に対する配慮が重要になってきます。

 

親から事業を引き継ぐ、土地を引き継ぐという人は、ぜひその点気をつけて下さいね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

民法改正で、夫婦間の居住用財産は、贈与(遺贈)における優遇措置などが変更された

こんにちは。

タイトルからして、「え、これどういうこと?」という印象を持つ人も多いでしょうが、お客様にお伝えするように、できるだけやさしく説明していきますね。

 

2020年7月からの民法改正で、配偶者(奥様・旦那様)が亡くなった人が、その後も家に住み続けやすいようにする方向が定められました。

 

ポイントを2点挙げると、

  1. 配偶者が相続開始時に、被相続人所有の建物に居住していた場合、配偶者は遺産分割において配偶者居住権を取得することにより、終身または一定期間、その建物に無償で居住できる
  2. 被相続人が遺贈等によって、配偶者に配偶者居住権を取得させることもできる

という点が挙げられます。

 

正直、文章だけ見ると、「・・・どういうこと?」と言われそうですが、これまでの事例と、民法改正後はこうなるという事例を並べてみると、わかりやすいかと思いますので、事例比較を出してみますね。

 

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民法改正前の場合

被相続人が遺産として、評価額2,000万円の家と、3,000万円の預金を持っていたとします。相続人は妻と別居している長男一人だけです。

 

法律通りに遺産分割をすると、妻と子供で2,500万円分ずつの財産を相続する形になります。

 

当然、妻はこれまでの家に住み続けるため、法律通りに分けると、妻は自宅(2,000万円)と500万円の預金を受け取ることになります。(これに加え、相続税も払う想定をする必要があります)

子供は預貯金をそのまま2,500万円受け取る形になります。

 

こうすると、妻としては、家は残るけれども、限られた財産で生活をしていかないと行けないという状況になります。

 

民法改正後の場合

2020年7月の民法改正後は、配偶者は、「自宅に住みつつも、その他の財産も取得できるようになります。

 

具体的には、妻は配偶者居住権として1,000万円分と預金1,500万円を相続、長男は負担付き所有権として1,000万円を相続、同時に預金1,500万円を相続する形となります。

 

ここでキーワードとなるのが、「配偶者居住権」と「負担付き所有権」です。

 

「配偶者居住権」と「負担付き所有権」ってなに?

配偶者所有権は、「いままで配偶者さんと住んでいた家に、これからも住んでいいですよ、ただし第三者に譲渡したり、所有者に無断で建物を賃貸したりすることはできません」という、限定的な所有権と言えます。

 

一方、負担付き所有権は、自宅の所有権を持つことができるという側面がある一方、相続において現預金の取り分は減るという点があります。

 

そのため、子供としては「まあ仕方ないか・・・」で済んでも、強欲な配偶者がいる場合、「そんな使い道のない家の所有権なんてたいしたお金にならないでしょ!それより預貯金の方をもっと相続しなさい!!」と、横やりを入れてくる可能性があります。

 

このように、制度上は、配偶者が亡くなるまで住み続ける権利を確保できる機会を与える一方、配偶者以外の相続人にとっては、自分の現預金の取り分が大きく減少してしまう可能性があるため、マイナスに働く場合も想定できます。

 

配偶者居住権以外にも、配偶者短期居住権というのも創設された

様々な事情で配偶者居住権が活用できない場合でも、配偶者に「すぐに家から出て行って下さい」というのは、道義的に酷です。

 

そのため、「配偶者短期居住権」という制度も創設されています。

 

配偶者が相続開始時に、遺産に属する建物に住んでいた場合、いきなり出て行ってもらうのではなく、一定期間(例えば、遺産分割が終了するまで)は、無償でその建物に居住できるようにしようよ、というのが配偶者短期居住権です。

 

ただ、どの制度を活用するにせよ、相続に精通した税理士など専門家の相談、土地家屋の評価額については不動産鑑定士の鑑定など、専門家への依頼が要されます。

 

その点、積極的に専門家に相談し、最適な方法を探るようにして下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2020年7月1日から始まる、相続の預貯金払戻制度について

2020年7月から、相続の仕組みがいろいろ変わると言うことで、今回から数記事使って

「相続に関するルール変更」について説明していきますね。

 

仕事で法務局とか商工会議所とか行くと、法務省の「相続に関するルールが大きく変わります」というパンフレットが置いてあります。

 

これを下敷きに、よりかみ砕いて説明していきますね。

 

遺産分割が完了しなくても、それぞれの相続人が一定の範囲で預貯金の払い戻しを受けられるようになった

これまでの場合、どの相続人であっても、遺産分割協議書が整ったり、相続人全員が金融機関所定のひな形にハンコを押さないと、預貯金の払い戻しは受けられませんでした。

 

(実情として、相続が発生すると、金融機関が口座を止める前に引き出すというケースも結構多かったようですが・・・)

 

ただ、一般論として、遺産分割の話し合いがまとまらないと、生活費や葬儀費用の支払い、債務の弁済など支払が必要でも、預金の払い戻しができないのは不便ですよね。

 

そこで、2020年7月の改正からは、下記の2点が変わりました。

  1. 預貯金の一定割合(上限あり)については、家庭裁判所の判断を経なくても金融機関の窓口における支払を受けられるようにする
  2. 預貯金債権に限り、家庭裁判所の仮分割の仮処分の要件を緩和する

 

特に2については、「どういうこと?」という疑問が来そうですが、もう少し詳しく説明してみましょう。

 

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預貯金の一定割合(上限あり)については、家庭裁判所の判断を経なくても金融機関の窓口における支払を受けられるようにする

相続開始時の預貯金債権の額×3分の1×当該払い戻しを行う共同相続人の法定相続分

→単独で払い戻しをすることができる額

となります。

 

こうしてみると余計に「え?」となるので、実例を出してみましょう。

亡くなったお父さん(被相続人)と、長男、次男の2人の相続人がいます。

お父さんには600万円の預金が金融機関にありました。

 

この場合、相続開始時の預貯金債権の額×3分の1は200万円、

そして相続人は2人いるので、200万×2分の1で、長男、次男が引き出せるのは、それぞれ100万ずつになります。(なお、一つの金融機関から払い戻しが受けられるのは150万円までです)

 

預貯金債権に限り、家庭裁判所の仮分割の仮処分の要件を緩和する

これが一般の人にとっては、「?」となる部分ですが、かみ砕いて言うと、

「仮払いの必要性があると認められる場合には、他の共同相続人の利益を害しない限り、家庭裁判所の判断で仮払いが認められる」ということになります。

 

具体例として、葬儀で180万円かかりました、でも1の制度で長男が引き出せるのは100万なので、80万足りません。

 

こう言う場合に、80万であれば、金額として次男の相続人の利益を犯すこともないので、仮払いを裁判所の判断で認めますよ、というのが新しい制度なのです。

 

このように、小口の資金需要に関しては、遺産分割の話し合いの終了を待たずに引き出せるようにし、ある程度大口の需要であっても、家庭裁判所の判断さえ通れば、引き出すことができるようになる、というのが今回の民法改正による、預貯金の払戻制度のポイントです。

 

以前ですと、亡くなる前に葬儀費や諸費用を予め銀行口座から出しておこう、という方式もありましたが、今後は、きちんと証明ができれば、銀行口座から相続人それぞれが、状況に応じて制度の範囲内で払い戻しを受けられるようになります。

 

このように、2020年7月の民法改正による相続制度の変更の影響は、いろいろな部分に現れてきます。これから数回、民法改正で相続制度がどう変わるかを、法務省が公式にパンフレットにした資料を元に説明して行ければと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

改正民法施行を踏まえた、遺産分割の注意点とは?

 


当ブログでは、実務で得た経験や、改正民法も踏まえ、個人相続や事業承継などについて扱っていきます。

 

今回はトピックとして、改正民法を踏まえた遺産分割の注意点についてまとめていきます。

 

まず、「遺産分割」という言葉の定義ですが、「相続が発生(=親などが逝去)したときに、相続人に当たる人たちが話し合い、遺産の分け方を決める話し合い」と定義できます。

 

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遺産分割・もめる家、もめない家

 

この遺産分割の手続きに関しては、スムースに行くケースもあれば、もめるケースも少なからずあります。

 

例えば、地方の経営者の場合、株式などの問題もあるので、業務の後継者が株や会社の経営を引き継ぎ、他の親族はお金など、いわゆる「ハンコ代」として一定の金額を受領することが多い傾向です。

 

逆に都市の場合や、地方でも、相続人の配偶者(夫・妻)に権利意識が強いと、遺産分割が難航するケースがあります。

 

例えば、会社経営の夫が死去、妻と長男、次男が相続人となり、長男が会社の経営を引き継いだとします。しかし、現金分はさほど多くなく、財産の大半が土地家屋と会社の株式という場合、もし配偶者が口出しをしてくると、一気に相続は難航します。

 

なぜなら、昔は法律情報にアクセスしにくく、ある意味兄弟間であれば「お互い様」という意識がありました。しかし現在の場合、ネットで調べると、様々な法律情報が出てきます。

 

そのため、ネットで得た断片的な情報を元に、「遺留分(遺言書の内容等にかかわらず、相続人が請求できる相続分)だけでもしっかりもらわないと!」という考えを持つ人は増えています。

 

確かに法格言で、「権利の上に眠るものは保護に値せず」という言葉があります。

 

一方、遺産分割においては様々な感情が絡むのも事実です。小さい頃から一緒に過ごした兄弟と、顔を合わせることもめったにない配偶者では、前者は「できるだけ穏便に遺産分割をしたい」、後者は「貰えるものはしっかりともらいたい」という気持ちになるのは仕方ないでしょう。

 

遺言書は絶対ではない

まず、遺言書の内容を覆すことはできないが、「遺言書の内容が絶対ではない」ということは、強く強調します。(なお、遺言書を作成者以外が書き換えることは犯罪となり、相続人としての地位を失うこともあります)

 

なぜ遺言書の内容が絶対ではないかというと、

  • 相続人全員の合意があれば、遺言書と異なる内容で遺産分割を行っても良い
  • 仮に、特定の財産を、特定の第三者に相続させる場合でも、子供・親に関しては「遺留分」として、法定相続分の2分の1を、最低限の権利として主張できる

という理由があるためです。

 

特に事業承継と相続が同時に発生する場合は大変

特に相続でもめるのが、企業経営者・個人事業主を行っている人が亡くなった場合です。

 

企業経営者の場合は、企業の株主(所有者)であり、経営にも代表取締役や会長などなどの形で深く関与しているケースが多いです。

 

個人事業主の場合も複雑です。事業における財産や借入、業務に関する許認可、従業員、取引先などとの契約、特許権など様々な権利が相続対象になります。

 

必然的に、評価金額が大きくなるため、数字の上では「事業を継続する人とそれ以外の人」で不公平感が出ることは否めないでしょう。

 

実務では、このような「引き継ぐ人はたくさん貰えて、そうでない人はもらえない」という事を防ぐために、「代償金」という形でまとまったお金(一括で用意できない場合は分割)を支払うこともあります。

 

ここで、相続人同士の話がまとまらない場合は、家庭裁判所の調停・審判など長引く形もあります。弁護士に依頼することになるため、数十万以上の費用もかかることとなります。

 

期間も当然通常の相続より伸びますし、相続人間の関係悪化と出費増など、良い結果にはつながりにくいというのが率直なところです。

 

改正民法で自筆証書遺言が作りやすくなったために想定される、遺産分割トラブル

民法の改正により、自分で作成する遺言、いわゆる「自筆証書遺言」の作成がパソコンなどででき、法務局に原本を保管することもできるようになりました。

 

ただ、私個人としては、専門家の目を通していない自筆証書遺言の増加が、遺産分割のトラブルを誘発するのではないかと懸念しています。

 

これまでは、遺言書を全て自分で書き、自宅に保管するという形式でしたので、「だったらちゃんと専門家に関与してもらい、公正証書遺言を公証人役場で作成しよう」という方も多かったのですが、公証人役場で公正証書遺言を作成すると、数万から十数万円、時にはそれ以上の費用がかかります。参考:日本公証人連合会(公証人役場での遺言作成費用

 

今回の民法改正で自筆証書遺言の敷居が低くなると、「お金もかかりにくく、書き換えも自由にできる自筆証書にシフトする流れもでてくるかと思います。

 

しかし、遺言には厳格な様式が定められていることに変わりはありません。そのため、専門家の目が入らず、結果として遺言の様式として不適切な内容になってしまう恐れがあります。

 

ですので、専門家としては、遺言を従来通り公正証書遺言で作成、原案も専門家の確認を経ることが、結果として遺産分割をスムースにできると考えます。

 

 

 

 

 

令和2年7月10日より始まる、法務局での自筆証書遺言書保管制度とは?

令和2年7月10日より、法務局で自筆証書遺言を保管してくれる制度がスタートします。

 

あまりアピールされておらず(他のところが忙しいという点もありますが)回りの知人と話していても、専門職の人以外はあまりご存じない制度ですが、活用法を理解して使いこなせば、非常に便利で、コストも安く付く制度と言えます。

 

今回は、自筆証書遺言書保管制度の概要と、自筆証書遺言保管制度を活用することが適した人について解説します。

 

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自筆証書遺言書保管制度ってなに?

制度をシンプルに説明すると、

  • 法務局で遺言書を保管してくれる
  • 法務局で遺言書の内容はチェックしない
  • 自筆証書遺言の偽造、変造を避けることができる
  • 家庭裁判所での検認手続きが不要のため、相続発生時に手続きがスムース
  • 公正証書遺言のように、数万~十数万の公正証書遺言作成費用がかからず、1通3,900円で遺言書をずっと保管してくれる
  • 遺言書の差し替え、保管の撤回などもできる

という、使いようによっては非常に便利な制度です。

 

なぜ、自筆証書遺言保管制度ができたの?

なぜ法務局で、自分で書いた遺言を保管してくれる制度ができたのかというと、

  • 自分で書いた遺言書は、自宅で保管されることが多い
  • 遺言書がなくなったり、悪意を持った法定相続人がわざと遺言書を捨てたり、隠したり、改ざんする可能性がある
  • 公的機関・それに類する組織で遺言を保管する制度はあるけれども、公正証書遺言は費用が高くて敷居も高いので、より多くの人に遺言の仕組みを使いやすくする必要があった
  • 相続後の不動産などの登記手続きが放置されるケースも多く、手続き漏れを防げる

 

など、預ける側にも、法務局にもメリットがあるからです。

ただ、万人にお勧めできるかというと、必ずしもそうとは言えません。

 

自筆証書遺言保管制度を活用すべき人は?

  • 複雑な事情のない人
  • 夫婦だけで、親か兄弟はいるが、子供がいない人

このケースの場合に、特にお勧めできます。

 

これまでだと、公正証書遺言を作るのが、全てにおいて確実な方法でした。今もお金がある場合や、複雑な家庭の事情(もめ事)がある場合は、公正証書遺言を作成した方がいろいろな意味で安心です。

 

一方で、複雑な事情はないが、遺言書を書いておき、特定の人に財産を渡したい場合や、夫婦だけで子供がいない場合は、自筆証書遺言保管制度を活用することを強くお勧めします。

 

子供がいない夫婦の場合、ぜひ自筆証書遺言保管制度を活用!

個人として常々お伝えしていることなのですが、「子供がいない夫婦(特に子供がいないけど兄弟姉妹がいる夫婦)」は、遺言書をぜひ作成してほしいと思っています。

 

本来なら相続の第一順位に当たる子供がいない夫婦の場合、相続が発生(夫婦のどちらかが亡くなる)と、両親がご尊命の場合は親(第二順位)、両親がお亡くなりになっており兄弟姉妹がいる場合(第三順位)は、兄弟姉妹が相続人になります。

 

親の場合はまだいいのですが、兄弟姉妹の場合が問題です。

 

兄弟姉妹の仲が良くなかったり、あるいは兄弟姉妹の配偶者が「もらえるものはしっかりもらっておきなさいよ」と権利を主張する人だった場合、ややこしいことになります。

 

もし、子供なし、兄弟姉妹ありで遺言書を書いていなければ?

相続人が、本人(男性)、配偶者と弟2人とします。このケースの場合、遺言書を作成していなければ、法定相続通りにすると、配偶者は4分の3、弟2人は4分の1を2人で分け合う、つまり8分の1を相続することとなります。

 

兄弟の仲が良く、兄弟の配偶者も理解がある人であればいいのですが、もし兄弟が「法定相続分を相続させて!」と言ってきたら問題です。

 

遺言書で夫が場合「遺言者に属する一切の財産は、妻(名前・生年月日を記載)に相続させる」としておかないと、法定相続分が弟2人の方に行く可能性もあります。

(ただし、相続人全員で話がまとまれば、法定相続分とは異なる分け方もできます)

 

兄弟姉妹は、遺留分がないため、遺留分減殺請求を主張できない

いきなり専門的な言葉を出しましたが、意外とこれも知っている人と知らない人の差が大きいので、ちょっとかみ砕いて説明しますね。

 

配偶者、子供、親は、遺言でいくら相続させないと書かれていても、一定割合は自分が相続できるようになる、「遺留分減殺請求」という手続きができるんですね。

 

でも、兄弟姉妹の場合、「遺留分」は存在しません。

 

つまり、遺言書で夫なり妻なりが、自分の財産は全て配偶者に相続させますよ、と書いておけば、スムースに全財産を配偶者に渡せるわけです。

 

こういうケースのご夫婦にとって、自筆証書遺言保管制度は、費用も安価で、遺言もシンプルなもので済むのでぴったりです。

 

自筆証書遺言保管制度を使わない方がいい人は?

まず、いろいろな事情(認知していない子供がいる、勘当した子供がいる、その他家庭に特殊なこと)がある場合は、専門家に依頼し、公正証書遺言をを作成した方が確実でしょう。

 

また、会社経営や個人事業主の場合も、様々な権利や株式の問題が絡むので、専門家に相談した上で、公正証書遺言を作成する形とした方がよいと言えます。

 

また、自筆証書遺言保管制度では、遺言書のチェックは行わないため、遺言の内容に誤りがあると、遺言書として機能しない可能性もあります。

 

そのため、確実な遺言を作成したい場合は、専門家を通して、公正証書遺言を作成した方がよいと言えます。

 

いずれにしても、今回の新制度は、家族構成によってはとても有用な制度です。ぜひ、法務局のサイトで確認してみてください。

 

 

 

 

自筆証書遺言書の開封はNG、家庭裁判所での検認手続必要。今後自筆証書遺言書でも検認不要になる新制度も

これはほんとうにうっかりや興味本位などでやってしまう人が多そうなので、事前に警鐘を鳴らしておきますが、「自筆証書遺言書の開封は絶対ダメ」です。

 

勝手に開封すると、自筆証書遺言書を入れ替えたり改ざんしたと疑われる、開封者に5万円以下の過料が課せられる恐れがあるからです。(なお、開封した場合でも、自筆証書遺言書の入れ替えや変造・偽造などが行われていない限りは、自筆遺言書の効力は有効です)

 

必ず、家庭裁判所で「遺言書の検認」という手続きを行いましょう。

(なお、公正証書遺言書の場合は、家庭裁判所での検認手続きは不要です。そのため、多くの専門家は公正証書遺言を勧めている傾向です)

 

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「遺言書の検認」とは?

検認手続きとは、家庭裁判所が相続人全員に遺言書の存在を知らせ、遺言書に変造・偽造・不審な点がないかを確認する手続きです。

 

検認の手続きは厳密です。

  1. 家庭裁判所に検認の申立を行う(故人の住所地を管轄する家庭裁判所)
  2. 検認に必要な収入印紙800円と郵便切手(家庭裁判所が指定)を、家庭裁判所に確認の上用意
  3. 検認申立書・遺言者の出生から死亡までの全ての戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本を準備
  4. 家庭裁判所に連絡し、必要書類の送付を行う
  5. 家庭裁判所より検認を行う日が郵送で通知される(相続人全員の出席が原則だが、やむを得ない場合は欠席も可。しかし、最低誰か一人は出席する必要あり)
  6. 予定期日に家庭裁判所で裁判所の検認を受ける。遺言書・認印、その他指定物を忘れないこと
  7. 裁判官が相続人立ち会いのもと、遺言書を開封し、状態・内容・不審な点がないかを確認
  8. 立ち会った相続人の同意が得られれば、「検認済証明書」の発行を申請(収入印紙150円と申立人の印鑑が必要)

 

と言うように、遺言の検認は非常に手間がかかります。それもあってか、令和2年7月10日から、法務局における自筆証書遺言書保管制度が始まるわけです。

 

法務局に自筆証書遺言を預けておくことで、(内容が適正化についてはチェックしない仕組みとなっていますが)家庭裁判所での遺言の検認手続きが不要となり、1ヶ月以上の時間と、相続人が開封に立ち会う手間をなくすことができます。

 

ただ、当面の間は、自筆証書遺言を自分で保管する方法と、法務局で保管する方法は、どちらも利用される形となる可能性が高いと推定します。

 

そもそも、今の社会状況(具体的には書きません)だと、法務局に行って手続きをしようとか、そもそも、「自筆証書遺言保管制度」に関する情報自体入ってきませんよね・・・

 

ですので、当面は、新制度の認知は進まないという前提で考えておいた方がよいかと思います。

 

遺言書、見つけたらどうする?

改めての復習になりますが、遺言書を見つけても、自分で勝手には開けないことです。

例外として、封をしていない自筆証書遺言については、開けたかどうかがそもそもわかりませんし、公正証書遺言の場合は、検認手続きは不要のため、開けたから過料が・・ということこそありません。

 

しかし、相続人同士での心情の問題として、封をしていない遺言書であっても、やはり見つけたら極力相続人全員で確認した方がよいでしょう。

 

そして封がしてあれば、必ず家庭裁判所に連絡し、検認の手続きについて指示を仰ぐこと。

 

自筆証書遺言・公正証書遺言など遺言の種別を問わず、法定相続人及び遺贈の指定を受けた人全員が同意すれば、遺言書と違う分け方もできる

意外な注意点として、原則としては法定相続人、また遺言で法定相続人以外への遺贈がある場合は、その遺贈を受ける当事者も含め、全員の合意(遺産分割協議書など)があれば、遺言書と違った分け方をしても問題はありません。

 

もちろん、遺言作成者の本旨に沿うことが理想ですが、様々な事情で、遺言通りの相続を行うことが望ましくないケースもあるかもしれません。

 

その場合は、遺言書と異なる相続・遺贈を行って問題はないのです。

 

ただ、相続人・遺贈の対象者に対し、「この遺言書の内容でなくてもいいよね」と思わせてしまうような遺言であっては、何のために作成したのかということになってしまいます。

 

遺言を作成した気持ち・理由をきちんと伝えるためにも、遺産分割の詳細だけでなく、なぜこのような分割内容にしたかという点や、相続・遺贈対象者に対する一人一人への言葉を「付言事項」として遺言書にしっかりと盛り込み、相続人など当事者の納得を得られるような配慮も必要でしょう。

 

実務上、一般家庭ではめったにみられない、イレギュラーな秘密証書遺言

余談になりますが、遺言作成者が自分で作成、公証人役場で手続き、本人が保管する「秘密証書遺言」というのも存在します。こちらに関しては、公正証書となっていますが、封がしてあれば家庭裁判所での検認は必要となります。

 

基本的にはお目にかかることはないかと思いますが、いずれにせよ封がしてある遺言書は、必ず家庭裁判所に検認してもらうということを抑えておいてください。

 

 

遺言書の書き方の本でお勧めのものは?

仕事柄、「遺言書そろそろ書こうと思っているんだけど、書き方教えて」、とか「遺言書でわかりやすい書籍ってない?などよく聞かれます。

 

前者の「書き方教えて」に関しては、「作成指導料いただくけどいい?」と返しますが、「わかりやすい書籍」というと返答に困るのが正直なところです。

 

というのは、遺言書の書き方に関する本で市場に出回っている物でも、法改正前の内容の物であったり、「遺言の書き方」にこだわりすぎていて、結局普通の人にとってはわかりにくい・・・というケースも多いからです。

 

その中で、

  • ざっと正しい形式がわかれば良い
  • いろいろな事情があり、遺言書を厳密に作成したい

とう2つのニーズに対応するサイト・書籍をそれぞれ紹介します。

 

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大まかに正しい遺言書の形式を知りたい場合は、法務局の作成例を参考に

遺言書を作成する上で、大体内容は決めており、相続内容も複雑ではない場合、まず法務局の自筆証書遺言保管制度のページに、簡単な遺言書の書き方があるので、そちらを参考にしてみましょう。

 

この記載例で、遺言に必要なポイントは抑えてありますので、まずこちらに目を通してみてください。

 

遺言書の書き方を、より深く知りたいときに適した書籍は?

法務局のサイトを見て、「ウチはいろいろと特殊な事情があるんだよな」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。

 

より遺言書の書き方を深く知りたい場合は、「令和版 遺言の書き方と相続・贈与」(主婦の友社)が比較的わかりやすいと個人的には感じました。

 

遺言書の基本(自筆・タイトル・相続と遺贈の違い・押印・作成年月日・訂正法)に加え、下記のようなトピックを扱っています。

 

  • 自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言・一般危急時遺言(実務上はめったに使われない)について
  • 民法改正が遺言書の様式に及ぼした改正点
  • 法的に遺言できる内容と、できない内容
  • 特別にしてくれた法定相続人以外の人に遺贈するときの注意点
  • 公正証書遺言の作成プロセスとポイント
  • 遺言を撤回・変更する際にはどうするか
  • 遺言書の保管や、法務局に預けず自分で管理する遺言の保管の工夫
  • 遺言が正しく機能するために、遺言執行者を指定する方法と遺言執行者の選び方
  • この人には相続させたくないという法定相続人の廃除申立(要件が厳しいです)
  • 財産目録を作成する上でベースとなる作成メモ

など、遺言書作成全般に関する疑問を、幅広くフォローしてくれます。

 

また、自筆証書遺言を作成するケースについても、

  • 表題の注意点
  • 日付・署名・押印の3点セットの重要性
  • 適した用紙と適した筆記具(もちろん、シャープペンだけでなく、消えるボールペンもNGです)
  • 日付に関する注意点
  • 遺言書の直し方(加除訂正)
  • 特定の財産を特定の人に相続させる場合の、他の相続人に対するフォローの仕方
  • 特殊な家族構成の場合の遺言作成の注意点
  • 相続財産を分割する指定方法
  • 特定事業を継がせたいときの書き方
  • 相続権のない人に財産を遺贈するための遺言書の書き方
  • お世話になった人への遺贈や、財産の一部を寄付する場合の注意点
  • 財産相続に条件をつけたい場合(親の面倒を見る、ペットの面倒を見るなど・・)
  • 障害のある子供のために、財産を信託にする
  • 葬儀の希望やその他周囲への感謝を伝える

など、自筆証書遺言で疑問となる様々なトピックを扱っています。

 

さらに、相続の基本・贈与の基本などについても法改正を踏まえてフォローしています。

1つ挙げると、意外と見落とされがちな点ですが、遺留分減殺請求制度が変更になりました。

これまでは、遺留分を土地建物の共有という形で出すことも認めていたのですが、土地建物の共有は、二次相続・三次相続など後の相続でトラブルを発生させかねないので、金銭支払飲みとして、すぐに金銭で支払えない場合は、一定の猶予を出すこととしました。

 

このように、遺言書の内容は、深く掘り下げていくと非常に複雑になります。

 

また、遺言書だけでなく、相続全体を通し、「かつかみ砕いてある」書籍(ムック)としては、「相続・贈与がまるごとわかる本 民法大改正対応版」もおすすめです。

 

こちらは、遺言書の基本や、遺族が損しないための遺言作成の注意点などを雑誌テイストで書いており、わかりやすいと個人的に感じます。

 

いずれにせよ、最初から完璧な遺言を仕上げるのは、難しいです。

 

まずはシンプルな形を確認し、それから事情に応じ、調べていくのが望ましいと思えます。(理想は、専門家に相談して公正証書遺言で作成することなのです)