相続トラブルでたまに聞く、相続人が遺言書を破棄・隠した場合どうなる?

今回も相続トラブルの話です。

 

私は関わったことがありませんが、もし相続人の誰かが、遺言書を見て、「これは俺にとって不利に書かれている遺言書で許せん!!シュレッダーにかけてやる」などと、遺言書を勝手に処分する、というトラブルが発生したらどうなるか、という話です。

 

(なお、下の画像に突っ込みを入れておくと、財産目録など一部以外の多くの部分の自筆証書遺言は、ワープロ作成ではダメで手書きの必要があります

 

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遺言書を勝手に破棄・隠匿(隠すこと)は当然犯罪で民事上・刑事上の責任も。そして相続人から廃除されることも!

普通に考えると想像が付くことですが、遺言書を破棄したり、偽造・変造を行う、また遺言書作成の過程で、相続人の誰かが被相続人を強迫などして、本人の意思とは異なる遺言を作成させるなど行うと、相続人として不適格となる、いわゆる「相続欠格事由」に該当し、相続人となることはできません。

 

ただし、本人が相続欠格者となった場合でも、その相続欠格者に子どもがいた場合、代襲相続という形で、悪いことをした人には相続権がないけれども、子どもには相続権が発生する・・・という、なんとも言いがたい状態になります。

 

また、遺言書を偽造・変造したり隠匿(隠す)ことによって、他の相続人など関係者に損害を与えた場合は、偽造・変造・隠匿などを行った人は、被害者から民事で損害賠償責任請求を受ける可能性があります。

 

また、当然ですが刑事上の責任もあり、偽造であれば、刑法159条1項の私文書偽造罪で5年以下の懲役刑、変造も刑法159条2項で同じ5年以下の懲役刑となっています。

 

また、書類の破棄の場合は私用文書毀棄罪で5年以下の懲役刑となります。

 

私用文書の毀損・書類破棄に関しては、「親告罪」となっており、告訴ができるのは、被害者・被害者の法定代理人、その他つながりの強い親族などに限られます。もし遺言書の破棄などがあった場合は、利害関係者が申し出る必要があります。

 

自筆証書遺言の偽造・変造・破棄がされていた場合の対策は?

遺言書に手を加えてしまうとなると、完全に弁護士の先生が関与する必要のある案件です。

 

早急に弁護士に相談し、調停や、偽造などに関する訴えを提起するなど、対策を行う必要があります。

 

ただ、自筆証書遺言の偽造・変造・破棄などを追求するには、それ相応の根拠が必要です。立証に関しては、弁護士にも相談しながら慎重に進めて行くべきでしょう。

 

これからであれば、自筆証書遺言の偽造・変造・破棄などを防ぐためにも、法務局の遺言保管制度を、親などに利用してもらうようにするのが望ましいでしょう。

 

法務局での自筆証書遺言の保管は、費用も3.900円とさほどかからず、後から新しい遺言書と差し替える手続きも可能です。(その際は別途手数料はかかります)

 

公正証書遺言の場合は、遺言書自体が破棄されても、原本の写しを公証人役場で取得できる

上記のように、自筆証書遺言だと、偽造・変造・破棄などの可能性もありますが、公正証書遺言の場合は、前の記事でも触れたように、公正証書遺言の原本が公証人役場に保管されています。

 

遺言作成者が保持しているのは、正本と謄本(正本のコピー)ですが、大本の書類である原本に関しては、公証人役場で調べることができますので、少しでも公正証書遺言に疑わしい部分(公正証書遺言なのに、なぜか書き換えられているなど)があれば、公証人役場に予約をして必要書類を持参、遺言検索を行い、公正証書遺言が存在する場合は、公証人役場で公正証書遺言の写しを取得することができます。

 

いずれにせよ、相続において遺言書の偽造・変造・破棄などの恐れがあるということは、犯罪性も含め、非常に問題があります。弁護士に相談し、もし万一本当に遺言書に関する不正行為が行われていれば、弁護士に相談、まずは穏便に落とし所を探ることを考え、それでもうまく行かない場合は、民事訴訟・刑事訴訟なども視野に入れた方が良いでしょう。