相続が発生しているのに、中心となる被相続人が遺言書を見せてくれないというトラブルが発生した場合、どうするか?

相続となると、財産の多い・少ないにかかわらずトラブルになることが、意外とあります。

 

特に、相続人間での、財産だけでなく感情も含めたトラブル。

 

今回、事例については多少アレンジはしますが、実際に相談をいただいた事を下敷きに、相続で時折ある「遺言書はあるらしいけど、他の相続人が遺言書を見せてくれない」というトラブルの場合、どう対処するべきかということ、公正証書遺言の場合であれば、他の相続人に知らせずに内容を確かめる方法について書いてみましょう。

 

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他の相続人が遺言書を見せてくれない場合の対処法

 

まず、最低限必要な対処としては、遺言書があると他の相続人が主張する場合、

  • 自筆証書遺言の場合、遺言書の検認を行うよう強く請求すること(相続人であれば、誰でも請求権があります)
  • 公正証書遺言の場合、遺言公正証書の原本を見せてもらうこと

が重要です。

 

自筆証書遺言の場合、7月より始まった法務局での遺言書保管制度を利用している場合以外は、家庭裁判所で遺言書の検認を受ける義務があります。

 

遺言書の検認とは、亡くなった人が自筆で書いた遺言書が正当なものであるかを、確認する手続きです。相続人の中の一人の請求により、裁判所において全相続人の立ち会いの下、変造など不正がないかを確認します。

 

そのため、亡くなった人が自分で書いた遺言が存在するというのに、相続人の一部の人しか遺言を確認していない、という状況は、本来あり得ないのです。

 

そのため、遺言書の検認をするよう相続人に依頼しましょう。

 

公正証書遺言の場合はどうする?

では、公正証書で遺言を作っている、でも他の相続人が遺言書を見せてくれないという場合はどのように対応したらよいでしょうか。

 

実は、公正証書遺言の場合は、自身も相続人であれば、他の相続人に知らせることなく、遺言書の内容を確認することができます。(ただし、被相続人が亡くなっている事が前提です)

 

公正証書遺言の原本は、被相続人が公正証書遺言を作成した公証人役場に保管されています。

 

公証人役場はそれぞれ独立して運営されています。どこの公証人役場で遺言を作成したかがわからない場合は、まずはどこの公証人役場で遺言が作成されたかを確認する「遺言検索」の手続きを行う必要があります。

 

遺言検索の手続きは、公証人役場へ直接行く必要がある

現在も新型コロナウイルスの影響がある状況ではありますが、原則として、遺言検索に関しては、最寄りの公証役場に、電話で予約をした上で、必要書類を揃えた上で出向く必要があります。

 

必要書類としては、

1 亡くなった人と相続人である自分の関係がわかる戸籍謄本(市区町村役場の窓口で、「相続に使うので、亡くなった○○と私のつながりがわかる戸籍一式をお願いします」と言えば大体出してくれます。ただし、戸籍が一つの市町村だけでないケースもあり、この場合は戸籍が移っている市区町村の方にも、郵送で請求をかける必要があります。)

2 亡くなった人の除籍謄本

3 自身の身分証

4 認印

というパターンが多いですが、念のため公証人役場に電話したときに、必要な書類を確認してメモして下さい。

 

必要書類一式を揃えた後、公証人役場へ行き、遺言検索の手続きを行い、公正証書遺言が存在するかを確認、その後、公正証書遺言が存在することがわかれば、「謄本交付」という、公正証書遺言の写しに近い要素を持つ書類の交付を受けるようにしましょう。

 

なお、費用に関しては、1枚250円×紙の枚数となっており、遺言検索は無料です。

 

戸籍取得では千円弱~数千円の費用がかかりますが、両方併せても、手間こそかかれど、費用はさほどかかりません。

 

このように、遺言があるという場合、「本当に遺言書が存在するのか、自筆証書遺言なら検認を受けたのか、公正証書遺言なら、公証人役場に原本があるのか」という点は注意するようにして下さい。