相続や遺贈によって国外から財産を取得した者は、その外国における法律に従って相続税を納付します。しかし日本でも課税がなされ二重課税が生じることがあります。この問題を是正するため、「外国税額控除」という制度が設けられています。
ここではこの外国税額控除の適用を受ける条件や、その額について、解説していきます。
外国税額控除の金額
当該控除では、海外ですでに支払った税額が上限となり、日本での納税額を減らすことができるという内容になっています。
実際に控除できる金額は、以下の2パターンのいずれか小さいほうです。
- 外国で納付した税額
- 国内での相続税額×(外国にある財産の額/相続人の相続財産の額)
そのため、外国で収めた税額が非常に大きかったとしても、そのままその金額が全部引かれるというわけではありません。
国内での税額との兼ね合いのもと、算定されるのです。控除を受けようとするのであれば、各国にある財産の状況は正確に把握しなければなりませんんし、外国での納税額と国内での納税額両方の計算をしなければなりません。
控除の要件
また、以下の要件も満たさなければなりません。
- 「相続や遺贈」によって外国の財産を取得したこと
- 当該財産につき、その外国で「相続税相当の課税」をなされたこと
この控除は、そもそも二重課税を避けるために作られた制度です。そのため、要件2にあるように外国で相続税が課税されていなければなりません。名称として「相続税」とされている必要はなく、実質的に見て相続税と評価できるものであればこの要件を満たします。
しかしながら、意外にも、これに相当する課税がなされる国ばかりではありません。
日本では当たり前のように相続時に課税がなされますが、課税されない国も多く存在します。
例えばアメリカやフランス、ドイツ、イギリスなどであれば日本同様に課税の仕組みがあります。他方、オーストラリアやカナダ、スイス、タイ、シンガポール、マレーシア、スウェーデンなどでは課税が行われません。
また、日本でもそうですが、相続があったからといって実際に納税が求められるのは限られた場面です。数十万円、数百万円程度の財産しかなければ基礎控除等によって納付額はゼロとなることが多いです。
アメリカなどの国でも同じような運用をしているところが多く、数億円程度の財産があって初めて課税機会が訪れます。
よって、外国税額控除は国境をまたいで活動する資産家にとっては非常に重要な控除であるといえるでしょう。