遺言書の書き方の本でお勧めのものは?

仕事柄、「遺言書そろそろ書こうと思っているんだけど、書き方教えて」、とか「遺言書でわかりやすい書籍ってない?などよく聞かれます。

 

前者の「書き方教えて」に関しては、「作成指導料いただくけどいい?」と返しますが、「わかりやすい書籍」というと返答に困るのが正直なところです。

 

というのは、遺言書の書き方に関する本で市場に出回っている物でも、法改正前の内容の物であったり、「遺言の書き方」にこだわりすぎていて、結局普通の人にとってはわかりにくい・・・というケースも多いからです。

 

その中で、

  • ざっと正しい形式がわかれば良い
  • いろいろな事情があり、遺言書を厳密に作成したい

とう2つのニーズに対応するサイト・書籍をそれぞれ紹介します。

 

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大まかに正しい遺言書の形式を知りたい場合は、法務局の作成例を参考に

遺言書を作成する上で、大体内容は決めており、相続内容も複雑ではない場合、まず法務局の自筆証書遺言保管制度のページに、簡単な遺言書の書き方があるので、そちらを参考にしてみましょう。

 

この記載例で、遺言に必要なポイントは抑えてありますので、まずこちらに目を通してみてください。

 

遺言書の書き方を、より深く知りたいときに適した書籍は?

法務局のサイトを見て、「ウチはいろいろと特殊な事情があるんだよな」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。

 

より遺言書の書き方を深く知りたい場合は、「令和版 遺言の書き方と相続・贈与」(主婦の友社)が比較的わかりやすいと個人的には感じました。

 

遺言書の基本(自筆・タイトル・相続と遺贈の違い・押印・作成年月日・訂正法)に加え、下記のようなトピックを扱っています。

 

  • 自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言・一般危急時遺言(実務上はめったに使われない)について
  • 民法改正が遺言書の様式に及ぼした改正点
  • 法的に遺言できる内容と、できない内容
  • 特別にしてくれた法定相続人以外の人に遺贈するときの注意点
  • 公正証書遺言の作成プロセスとポイント
  • 遺言を撤回・変更する際にはどうするか
  • 遺言書の保管や、法務局に預けず自分で管理する遺言の保管の工夫
  • 遺言が正しく機能するために、遺言執行者を指定する方法と遺言執行者の選び方
  • この人には相続させたくないという法定相続人の廃除申立(要件が厳しいです)
  • 財産目録を作成する上でベースとなる作成メモ

など、遺言書作成全般に関する疑問を、幅広くフォローしてくれます。

 

また、自筆証書遺言を作成するケースについても、

  • 表題の注意点
  • 日付・署名・押印の3点セットの重要性
  • 適した用紙と適した筆記具(もちろん、シャープペンだけでなく、消えるボールペンもNGです)
  • 日付に関する注意点
  • 遺言書の直し方(加除訂正)
  • 特定の財産を特定の人に相続させる場合の、他の相続人に対するフォローの仕方
  • 特殊な家族構成の場合の遺言作成の注意点
  • 相続財産を分割する指定方法
  • 特定事業を継がせたいときの書き方
  • 相続権のない人に財産を遺贈するための遺言書の書き方
  • お世話になった人への遺贈や、財産の一部を寄付する場合の注意点
  • 財産相続に条件をつけたい場合(親の面倒を見る、ペットの面倒を見るなど・・)
  • 障害のある子供のために、財産を信託にする
  • 葬儀の希望やその他周囲への感謝を伝える

など、自筆証書遺言で疑問となる様々なトピックを扱っています。

 

さらに、相続の基本・贈与の基本などについても法改正を踏まえてフォローしています。

1つ挙げると、意外と見落とされがちな点ですが、遺留分減殺請求制度が変更になりました。

これまでは、遺留分を土地建物の共有という形で出すことも認めていたのですが、土地建物の共有は、二次相続・三次相続など後の相続でトラブルを発生させかねないので、金銭支払飲みとして、すぐに金銭で支払えない場合は、一定の猶予を出すこととしました。

 

このように、遺言書の内容は、深く掘り下げていくと非常に複雑になります。

 

また、遺言書だけでなく、相続全体を通し、「かつかみ砕いてある」書籍(ムック)としては、「相続・贈与がまるごとわかる本 民法大改正対応版」もおすすめです。

 

こちらは、遺言書の基本や、遺族が損しないための遺言作成の注意点などを雑誌テイストで書いており、わかりやすいと個人的に感じます。

 

いずれにせよ、最初から完璧な遺言を仕上げるのは、難しいです。

 

まずはシンプルな形を確認し、それから事情に応じ、調べていくのが望ましいと思えます。(理想は、専門家に相談して公正証書遺言で作成することなのです)