相続人以外でも相続が受けられるケースも?特別の寄与の制度とは?

相続に関していろいろとルールが変わりますよ、ということは解説していますが、「特別の寄与の制度」という制度は、大きな変更点の一つと言えます。

 

f:id:sozokufighter:20200615184608j:plain

 

特別の寄与の制度とは?

これまでは、相続人以外の人が、被相続人(なくなった人)の介護にいくら尽力しても、相続財産を取得することができませんでした。

 

よくあるケースとして、被相続人と同居している長男、別居している次男、長女の三人がいて、その3人にそれぞれ配偶者がいたとします。次男・長女は、疎遠で、介護を手伝うどころか、会いにも来ません。

 

でも、長男には子供が産まれることがなく、しかも被相続人より先に事故で亡くなったとしましょう。そして配偶者に当たる妻が被相続人の介護をしてきて、その後被相続人が死去。

 

この場合、介護に尽力した配偶者は、どれくらいの相続ができるでしょうか?

 

実は、これまでの制度なら、遺言などがない限りは、1円も相続できませんでした。義理の父であっても、です。

 

一方で、次男・長女で被相続人の遺産を半分ずつ、総取りできてしまいます。

 

これは介護で頑張った配偶者が気の毒でしょう、ということで、2020年7月の民法改正後は、相続開始後に、配偶者が相続人に対し、金銭の請求ができるようになりました。

 

具体的に、いくらの額が請求されるという事は明確化されていませんが、介護の労力に報いるだけの金額は請求できるようになると思われます。

 

ただ、何も手続きをしなければ請求はできませんし、これまでどれだけ介護に尽力してきたかを記録、立証できる日誌やその他証拠など、「これまで介護でこれだけ労力を払ってきたんですよ」と言える根拠資料は必要でしょう。

 

また、実際に請求を行う上では、弁護士など専門家の助力が必要になる可能性があると想定されます。

 

具体的な請求額が決まっていないからこそ、事前に相続対策を専門家に相談した方がベター

法務省のパンフレットなどでも、特別の寄与の制度で、寄与した人がいくら請求できるということは、数字で明確化されていません。

 

だからこそ、今後相続対策を考える上では、介護に尽力した人の分も踏まえて、遺産分割案を検討していく必要があります。

 

これは、相続人だけで話し合いがつけばベストですが、心配な点がある場合は、事前に専門家に相談して、対策・特別寄与者への配慮を考えておいた方がよいでしょう。

 

注意点は、被相続人の親族が無償で非相続人の療養看護等を行っていること

特別の寄与の制度で注意すべき点は、親族が「無償で」療養・看護を行っていることが前提と言うことです。

 

つまり、生活費を受け取ったり、被相続人の財産から生活費を出していたりした場合は、無償ではないため、特別の寄与の制度の対象外になります。

 

そのため、義理の父・母の療養看護等を行っている場合は、お金を引き出すときに、「この引き出したお金は療養看護のためだけに使いました」ということが立証できるよう、レシートや出納記録など、資金使途が療養看護等だけのものであることを明確にし、自身の為に使っていないことを証明できるようにする必要があります。

 

裁判にせよ、調停にせよ、あらゆる法的手続きは、記録・証拠が全てで、いくら療養看護等に尽力しても、それを第三者に立証できる記録や資料を残しておかないと、いくら権利があっても活用できませんし、逆に、きちんと記録をしておかないと、被相続人の財産を使い込んだと誤解されてしまう可能性さえあります。

 

そのため、療養看護等をせざるを得ない状況、かつ相続権のない人は、ぜひ「無償で療養看護等を行いました」と立証できるよう、記録や資料、通帳での引き出し時には、何のために利用したかを通帳とノートにメモするなど、きちんと後から立証できる証拠を残しておくことを、強くお勧めします。