今回は相続税の税務調査について書きます。
まず、税務署の税務調査でぜひ知っておいてほしいポイントをまず挙げましょう。
- 税務調査は申告から1~3年後、落ち着いた頃にやってくる
- よほど悪質ではない限り、電話での事前連絡がある
- 理想は税理士に申告、税務調査対応をしてもらい、税務調査日に立ち会ってもらう
- 資料・領収書・記録など相続に関することを、普段、そして相続発生時以後ともにきちんと記録する
- 税務署は独自のシステムを持っており、全てお見通しと思い、嘘はつかない、また言わなくていいことは言わない
特に、四番目の「資料・領収書・記録」の存在は大切です。
家族や仲の良い親族内なら、口約束など書面にしなくても・・・、となりますが、税務調査は税務署という「第三者」が行う調査です。
この場合、書面が残っていないと、口頭の話だけでは「本当ですか?」と税務署の調査官に思われてしまいます。
また、税務署はKSK(国税総合管理システム)というネットワークを構築しており、全納税者の納税額・お金の流れなどを把握しており、ごまかしはききません。また、金融機関の残高・生命保険などの支払いに関しても、税務署の権限で、相続人に知らせることなく取得できます。
ただ、国税は、無申告・過少申告に対しては厳しいものの、逆に払いすぎているパターンに関しては、原則何も言ってくることはありません。納税者側がきちんとした根拠をもとに、払いすぎたことを説明する必要があります。
そのため、私が言うのも何ですが、判断に迷う場合こそ、納税での過少申告ミスをなくしたり、解釈の違いで必要以上に納税せずにすむよう、税理士にきちんと依頼した方が安心といえます。
上記のポイントを踏まえて、税務調査の実務的な流れを紹介していきましょう。
税務調査全体の流れは?
税務調査の基本的な流れは、下記の通りです。
- 税務署から事前連絡が来て日程調整、同時に税務署が依頼する資料(申告資料・被相続人・相続人の通帳一式やネットバンクの取引明細一式・相続人それぞれの認印など)を用意しておく
- 日程調整後、税務調査の日時を決め、被相続人の生前の住居にて相続人全員(重大な病気などやむを得ない場合は除く)が集まり、税理士に税務調査対応を依頼している場合は税理士も同席
- 概ね1日かけてヒアリング・通帳や家の中全体の調査、カレンダー・日記・各種記録・金庫内の確認など。場合によっては数回に分けて行われる場合もある
- 税務署の方で1ヶ月~1年程度調査、申告内容に修正点があれば修正申告を求められ、無申告加算税(5~20%)や過少申告加算税(10~15%)など追徴課税がされる、額が多く悪質な場合は重加算税(35~40%)や刑事告訴も。
怖いのが、相続発生後数年経過してから来るケースも多いため、既に相続したお金を使ってしまって追徴課税が払えない・・・、というケースです。
そのため、相続発生後概ね5年(相続税の事項は5年・悪質な場合は7年)は、調査が来ることを念頭に置くことが望ましいと言えます。
相続発生前の事前準備も大切
よほど「終活」を意識している人でない限り、だれも亡くなる、相続が発生するという前提の準備はしていません。
ですが、元気なうちに、いかに制度を活用し、法律に基づいた節税対策を行うかが重要となります。
様々な対策がありますが、それぞれの内容を具体的に挙げていくと時間がかかりますので、大まかな制度名をピックアップします。
- 生命保険の活用(相続時の死亡保険金には法定相続人1人につき500万円までの非課税枠があるため)
- 小規模宅地等特例(宅地の評価額をケースによっては80%減らせる)
- 数千万=~億単位のまとまったお金がある場合、現金を不動産にすることで、資産の評価額を下げる
- 子供が結婚している場合、家の後を継ぐ配偶者を養子にすることで、法定相続人の基礎控除が増やせる(ただし、1人まで。実子がいない場合は2人まで)
- 暦年課税・相続時精算課税を活用する
など、様々な制度があります。ここに書き切れないくらい制度がありますので、詳しく制度を知りたい方は、後ほどおすすめする書籍に目を通してみてください。
もちろん一番の理想は、元気なときから税理士など専門家に相談し、準備を行うことですが、そこまで手間はかけたくないという場合は、できるだけ相続に関して新しい情報がアップデートされた書籍に目を通すことをお勧めします。
相続前・相続時に迷ったときに手に取るべき、お勧め本は?
書籍・ムック・新書など、相続関係の本は多くありますが、わかりやすさという点でいうと、「プロが教える!失敗しない相続・贈与のすべて 監修 相続サポートセンター(ベンチャーサポート税理士法人)」というムックが、年度ごとに更新されており、図表・イラストも多くわかりやすいと思います。
また、週刊ダイヤモンド・週刊東洋経済・プレジデントなど雑誌で相続特集の企画が組まれるケースも最近増えており、こちらも最新のトピックを盛り込んでいるため、おすすめです。
いずれにしても、相続に関しては数年前の本は役に立ちません。
必ず、最新の書籍なり、知識をアップデートしている専門家の力を借りるなりすることが必要です。