相続が発生した場合に、相続財産の額の大半を占めることもあるのが、土地です。
土地の評価額は大きいため、結果的に相続税の額が大きくなる原因ともなります。
しかし、相続財産に含まれている土地の評価額がわからないため、相続税がいくらになるかわからないという方も少なくありません。
今回と次回の2回に分けて、土地の相続税評価額の計算方法や相続税の負担を減らすための方法を解説していきます。
相続税の土地評価額は時価の7割から8割
相続税を計算する際に用いる土地の評価額は、相続税評価額と呼ばれます。
土地の相続税評価額は、一般的に時価の7割から8割といわれており、また土地の固定資産税評価額は、一般に時価の7割程度といわれます。
第三者間で行われた取引価格をもとにした時価と比較すると、相続税評価額は低く、固定資産税評価額はさらに低くなります。
相続税における土地の評価・計算方法
土地を相続した場合、どのような流れで相続税の計算を行うのでしょうか。
簡単にその流れをご紹介します。
①相続財産を確認し、その相続税評価額を求める
まずは、どのような財産を保有していたのかを確認します。
借入金や未払金などの債務も、相続財産となります。
土地や建物、有価証券などは相続税評価額を求める必要があるため、その計算を行います。
②法定相続人を確認し、基礎控除を求める
誰が法定相続人になるのかを確認します。
法定相続人が確定したら、その人数から基礎控除の額を求めます。
③課税対象の額を求めて法定相続分に分ける
①で求めた相続財産の額から②で求めた基礎控除の額を差し引いた額が、課税対象となる金額です。
この額を法定相続分で相続したものとして、各相続人の相続分を計算します。
なお、相続財産の額より基礎控除の額の方が大きい場合は、相続税が発生しないこととなります。
④相続税の額を計算する
各相続人の相続分として求めた金額から、相続税を求めます。
そしてそれらを合計した金額が、すべての相続人が納付する相続税の合計額となります。
⑤実際に相続した財産により相続税を按分する
相続税の合計額を、相続した財産の割合に応じて、各相続人に配分します。
ここで配分された税額が、実際に納付すべき金額となります。
相続税の土地評価方法5つ
土地の相続税評価額を求める際は、いくつかの評価方法があります。
評価対象となる土地の所在地ごとに評価方法が定められているので、まずはその評価方法を確認しなければなりません。
また、土地の利用状況によっては、更地として保有している場合とは区別して評価すべきケースもあります。
では、様々な土地の評価方法について解説していきます。
路線価方式による場合
路線価方式とは、国税庁が公表する路線価を使って、土地の相続税評価額を計算する方法のことです。
毎年路線価の金額は見直されるため、国税庁のホームページで確認する必要があります。
路線価方式による計算方法は、「路線価×土地の地積(㎡)」です。
たとえば路線価が180、地積が300㎡の場合、路線価は千円単位となるので、180千円×300㎡=5,400万円となります。
相続した土地に路線価が設定されている場合は、必ず路線価方式により計算しなければなりません。
まずは、路線価が設定されているかどうかを、国税庁のホームページで確認することから始めましょう。
倍率方式による場合
倍率方式は、市区町村で定めている固定資産税評価額をもとに、相続税評価額を計算する方法です。
固定資産税評価額は、各市区町村から送付される固定資産税課税明細書に記載されているため、誰でも簡単に知ることができます。
倍率方式による相続税評価額の計算方法は「固定資産税評価額×倍率」となります。
たとえば、固定資産税評価額が3,000万円、倍率が1.1倍の場合、3,000万円×1.1=3,300万円となります。
この倍率は、土地の所在する地域ごとに定められています。
具体的な倍率は、国税庁のホームページで確認する必要があります。
なお、倍率方式によるのは路線価が設定されていない土地となります。
路線価が設定されているかどうかを知るためには、結局、路線価を確認しなければなりません。
そのため、土地の相続税評価額を計算する際には国税庁のホームページは必要不可欠と言えます。
借地権を評価する場合
借地権とは、建物を所有する目的で他人の土地を借りる際に発生する権利です。
土地を借りている人は、その土地を利用することができますし、簡単に貸主から返還を求められない立場にあります。
そのため、単に土地を利用しているというだけでなく、一定の権利を有するものと考えられているのです。
借地権を有する場合、その借地権の相続税評価額は「土地の評価額×借地権割合」となります。
たとえば、土地の評価額が5,000万円、借地権割合が60%の場合、5,000万円×60%=3,000万円となります。
このうち、土地の評価額とは路線価方式または倍率方式により求められる金額のことです。
また、借地権割合は国税庁のホームページの路線価図・評価倍率表で確認することができます。
貸宅地を評価する場合
土地を他人に貸して、その上に借主が建物を建てている場合、借主には借地権が発生します。
この借地権は相続財産として評価の対象になりますが、土地そのものの財産価値がなくなるわけではありません。
借地権が付着した土地のことを底地といい、底地と呼ばれる土地のことを税法上は貸宅地と呼びます。
貸宅地の相続税評価額は「土地の評価額×(1-借地権割合)」で求めます。
たとえば、土地の評価額が4,500万円、借地権割合が70%の場合、4,500万円×(1-70%)=1,350万円となります。
借地権として借主の財産となった金額の残りが、土地の所有者の財産となるのです。
貸家建付地を評価する場合
土地の上に、アパートや貸家を建てて家賃収入を得ている場合、その土地の所有者であっても、自由に使うことはできません。
土地の所有者がその土地を自由に使うことができない分、その土地の評価額は減額されることとなります。
自身で建設したアパートや貸家が建てられている土地のことを、貸家建付地といいます。
この貸家建付地の相続税評価額は「土地の評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)」で計算します。
なお、借家権割合は一律30%と定められています。
また、賃貸割合は床面積で計算することとなり、建物すべてを賃貸している場合は1(100%)となります。
たとえば、土地の評価額が5,000万円、借地権割合60%、賃貸割合1の場合、5,000万円×(1-60%×30%×1)=4,100万円となります。