代襲相続人における基礎控除について掘り下げてみる

前回の記事では、基礎控除や相続税の計算について書きましたが、当記事では、「代襲相続人の基礎控除」について掘り下げていきたいと思います。

 

f:id:sozokufighter:20200423190218j:plain

 

そもそも、代襲相続人とは?

相続手続きの中で、普通の人に取ってややこしく感じられるのが、「代襲相続」という制度だと思います。

 

代襲相続とは、死亡・廃除などの理由で、相続権を失った人に代わり、相続人の孫が、他の相続人と同じ順位で相続人になるということです。

 

これがなぜややこしいかというと、法定相続人には、優先順位が定められているからです。

 

  • 優先順位に関係なく相続人 配偶者(夫・妻)
  • 第一順位 子供(胎児・養子・認知された非嫡出子も含む)
  • 第二順位 父母
  • 第三順位 兄弟姉妹

(なお、兄弟姉妹は、遺留分の対象外です)

この中で、配偶者と、第一順位に当たる人がいれば、その人たちだけで相続することとなり、いない場合に初めて第二順位の父母に相続が回り、さらに第三順位の人が相続する形となります。

 

しかし、この中で第一順位の子供は亡くなったけれども、その子供に孫・ひ孫がいるというケースだと、孫に対し相続権が回り、父母まで相続権が回ってくることはありません。

 

このため、相続人を考える上では、「被相続人が産まれてから亡くなるまでの一式の戸籍謄本を取得」し、念のため、非嫡出子や、離婚した前妻などとの子供・ひ孫・玄孫(やしゃご)、(それぞれ養子・非嫡出子も含む)がいないかを確認することが必要になります。

 

戸籍謄本は、被相続人の本籍地がある市区町村役場へ、窓口か郵送で取り寄せ、本籍地を移している場合は、本籍を移した市区町村役場へも請求する必要がある

戸籍謄本は、まず被相続人(亡くなった方)の本籍地の市区町村役場へ取り寄せます。

 

現在のご時世ですし、郵送で取り寄せるのが無難です。市民課などに確認し、必要書類と、必要額の定額小為替(ゆうちょ銀行で購入できます)、返信用封筒を封入し、請求します。

 

返信された戸籍謄本を確認し、本籍地を市区町村外へ移している場合は、その市区町村

役場へ、改めて本籍地変更後の戸籍謄本を請求する必要があります。

 

そのため、被相続人が本籍地を移した頻度が大きいほど、出生から死亡までをたどるのは大きな負担になります。

 

また、戸籍自体も、年代が古くなるにつれ、手書きの戸籍も増え、専門家でも読むのに一苦労するケースがあります。特に、大正4年から昭和22年までの、現在の形式になる前の戸籍は、非常に細かく、慎重に目を通す必要があります。

 

そのため、戸籍の解読に慣れた専門家に依頼することをできればお勧めします。

 

代襲相続人は、基礎控除の対象になる?そして、代襲相続で気をつけたい、時間が経ってからの遺留分減殺請求とは?

結論から言うと、代襲相続人も、前回述べた、法律で定められた相続人、つまり「法定相続人」に当たりますので、1人当たり600万円の基礎控除が加算されます。

 

改めての復習ですが、法定相続人となり、遺産を受け取る対象となる人が、基礎控除の加算対象になります。

 

仮に、代襲相続者との関係が悪く、代襲相続者が相続欠格や廃除などの手続きをされていない場合、きちんと遺言を作成しておかないと、法定相続分は代襲相続人にも渡ることとなりますし、代襲相続人は直系卑属(直接の子供・孫・ひ孫・玄孫)であるため、遺留分として法定相続分の半分を請求する、遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)というのができてしまいます。

 

遺留分減殺請求に関しては、相続開始後

  • 減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないとき
  • 相続開始から10年経過

した際に、権利が消滅します。

 

逆に言うと、9年経ってから代襲相続者が現れ、遺留分減殺請求を行った場合、これまでの相続手続きを全てやり直すことになってしまいます。

 

もちろん、このようなケースは実例として極めて少ないと思いますが、万一数年なり8,9年経過してから遺留分減殺請求のような事態が発生した場合、全ての手続きをやり直すこととなりかねません。

 

上記のような負担を防ぐには、被相続人が遺言を作成する、既に代襲相続人がいて、その相続人の行動が目に余る場合は、相続対象としないよう「廃除」する手続きを家庭裁判所に行うこととなります。

 

ただし、廃除に関しては、よほどの事情がない限り認められないというのが実情です。

 

そのため、遺留分減殺請求分ほどは代襲相続者に遺し、あとは他の人に相続させるという形が無難ではないかと思います。

 

また、遺言書を作成し、本来は相続させたくないが、最低限の相続はさせること、なぜそのような措置を取ったかも含め、遺言書に盛り込んでおくのも一つの方法といえましょう。

 

世代を問わず、多くの人が法律情報にアクセスできるようになったことで、「遺産は相続しないといわれても、遺留分減殺請求の制度を使えば、法定相続分の半分は請求できるんだぜ」というような、自分に都合の良い情報を集めやすい世の中になっています。

 

確かに、権利の上に眠る者は保護に値するという法格言もありますので、遺留分、つまり自分が最低限もらえる分について主張することは、法律上は何ら悪いことではありません。

 

特に地方や昔からの家の場合、何かと穏便に話を進めるケースが多いですが、現在は価値観も多用し、権利を主張するということに対し、抵抗感もなくなっています。

 

相続発生時や遺言書作成の際には、代襲相続者の存在や遺留分減殺請求の可能性などにも、是非目を向けて欲しいと感じます。